下手に出てくる野暮な人間と付き合うよか、お前等はよっぽどお似合いなんだよ。
ふと、同僚から言われた節操のない言葉を思い出し、さんさんと降り注ぐ空を見上げれば、曇り一つ無い澄んだ空。
光に輝く銀髪を揺らし、立ち尽くす長身の神父はやや暫く瞑想に入り浸るように青空を眺めると、待ち合わせの場所へと歩を進め始めた。
「トーレース君!」
待ち合わせ相手の、かの有名な機械化歩兵は、神父アベルが約束の時間を大幅に遅刻しているにもかかわらず、微塵も表情を崩すことなく相手を見やるや、その口からお決まりの文句を言い放つ。
「ナイトロード神父、約束の時間を3726秒過ぎている」
既にわかりきった言葉。
誰にでも言う同じ言葉。
うんざりといった風に溜息を吐き出すアベルは、反抗期さながら言い訳を言い始める。
それすらお決まりの言葉。
「トレス君はいつもそればっかりですよ。まぁ、遅刻した私も悪いんでしょうが、たまには心配くらいして下さいよ」
「卿に身体的異常は見当たらない。遅刻は個人的所用と見る。理由を……」
「はいはい、私が悪かったです。私がわるーございました!」
大袈裟に頭を振りながら、長身な神父は溜息を一つ吐き出すと、既にさっきまでの自己嫌悪など忘れたように笑顔を取り戻し、もう一度空を見上げる。
「今日はまた格別に天気がいい。そう思いませんかトレス君? これは日頃、汗水、いや、鼻血すら垂らし働いている私に神様が……って、トレス君!」
アベル自身が、独り言のように喋っていたのに気がついた時、隣に居合わせていたはずの同僚の姿は既に黒い点のように遠くまで進んでおり、神父は取り残された場で一人、また重い溜息を吐き出した。
「私っていつもこうですよねぇ……」
途方に暮れるアベルを知ってか知らぬか、
「ナイトロード神父、約束の時間を過ぎている。可及的速やかに目的地に移動することを推奨する」
そんな声がイヤーカフスから聞こえてくるのだ。
「はいはい、今行きますよーだ……」
まるで節操のない喋り方は既に慣れっこだったが、アベルにしてはどうも今一つ物足りなかった。
「トレス君」
「何だ?」
不意に思いついた名案。
アベルはナイスアイデアを悟られないように、平常装いイヤーカフスに向かい声を発した。
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