愛者 トレアベ

 抱きしめて下さい。
 粉々に壊して下さい。
 もう跡形も残らないように……


「卿の発言は理解不能」


「……はっ!? 私、何か言いましたか……?」


 どうやらうたた寝をしていたらしい。
 たくましい胸元で、アベルは我に帰った。


「ナイトロード神父、解答の入力を」


「や、私、何か……?」


 必死で解答を述べようとするが、やはりトレスが言うような事は一言も言っていない。


「私、やっぱり」


 そう言った時だった。


「卿は、全くをもって学習能力がない」


 大きな手がアベルの頬を撫でた。
 そして、うたた寝していた時と同様に、寝たまま胸元に押し戻されたのだ。


「や! トレス君! 私、もう起きちゃったのでいいですよ!?」


 改めてこんなことをされると、恥ずかしくなって頬を赤らめてしまう。
 しかしトレスのほうはそんなことお構いなしといった感じだ。
 それでも今は、今だけはこのままでもいい。
 ――そうアベルは思った。


 この赤らめた頬を隠す為ならば。





Fin


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あきゅろす。
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