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できれば安らぐような穏やかな日々が 山崎と猿飛
 一緒に抱き締めあっているこの彼女のことを語るとき、この肉感的な体について触れないわけにはいかないのだ。それは僕が男という性(さが)のせいかもしれないし、世間というアバズレがそれを欲しがるのだからかもしれない。
 とても僕には勿体ない。彼女の美し過ぎる均整のとれた骨格に、離れまいとしがみ着くように柔らかい肉が被われている。白くて、でも肉の色がして、皮膚は艶々と日の光を鈍く反射する。うぶ毛が金色に透けて、動物的な生々しさを見る人に近づけてくる。こんな匂いたつような女を俺たちは見たことがない。綺麗過ぎる彼女は残念なことにとても目立つ。淫慾の蠢き、汚ない路地。このまちは彼女を放っておいてなんかはくれない。彼女の髪もそう、仕事の質だって、闇夜に浮かぶ満月よりも眩しく光る。何本もの腕で離しはしないと捕らわれている人質のようだ。俺のこの頼りない腕をくびれた腰にまわしても、彼女が俺のうなじを子猫にやるかのように撫でてくれても構わない。
「猿飛」
「…山崎」
「君がそこらへんでOLでもしていてくれたら良かったのにな。」
「だったら私の魅力はきっと損なわれているわ。」
「金持ちの上司と不倫でもして、楽しくやっていそうだよ。」
「私ならそこでオヤジを刺して、金銀財宝いただいて逃げるのよ。」
「じゃあ今と一緒じゃないか。」
「一緒よ。ずっと一緒よ。」
「僕は君を追いかけるの?」
「夜はちゃんとあなたのところに戻ってきてあげるわ。」
「僕は犯罪者を匿わなきゃならないのかい?」
「匿ってる時点であなたも犯罪者よ。さっき言ったでしょ、なにもかも一緒なのよ。」
うれしそうに笑う、久しぶりに見た彼女の歯に僕は安らぎを覚える。

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