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道化の滑稽死



お姫様なフレイにとってセックスはお伽話の外の世界の話で、キラの手でつい先日破瓜を迎えた今でも、それは変わらず、何処か他人事のように思えてしまう。彼の他にその行為について情報を得る手段を知らないし、キラがフレイを愛しむように愛撫すれば彼女は歓喜に震え、キラを求めてしまうのだ。

キラ、もっと私を愛して。

彼が自分を求めるだけの行為だったらこんな思いをせずにいられたのに、キラは何時でも、愛してる、と優しく囁きながらフレイを愛しむように触れるのだ。湧き出る快楽に果てが見えず、何度意識を手放したか分からない。胸に背中に耳元に蜜壺に、キラを感じれば感じる程にフレイの体は底無し沼に溺れていく感覚を味わった。

最初はフレイがキラに与えていたはずなのに、今はフレイが有り余るほどの愛情を一身に受けている。本来愛された事しかないフレイはそれが本来の姿だったし、それが間違えだとは思わなかった。しかし、不思議な事にフレイはキラから愛情が欲しいと思ったことはなかったのだ。これは彼女が望んだことではなかったし、フレイは最初からキラなんて愛していなかった。フレイはあくまでも、キラを利用しているだけなのだ。

「フレイ、愛してる。
 フレイは僕が守るから。
 安心して、フレイ。
 愛してる。」

熱に浮かされたように何度も何度もキラはフレイに愛を囁く。
いくら愛を囁かれたと言っても、フレイが欲しいのは愛ではない。キラの持っている力だ。
何にも力がないナチュラルの彼女が身を守るためには力があるものを手に入れなければならない。それに庇護されていればフレイは傷つくことはないのだ。そう、死んだ父のように。

しかし、いつの間にかキラに囁かれる愛が心地好いと感じてしまっていた彼女が少なからず彼女の中にいた。

「愛してる。
 愛してる。
 愛してる。
 君を愛してるよ、フレイ。」

囁かれた言葉は毒のようにフレイの中にいつの間にか染み込んでいて、気付いたときにはもう、フレイは其れなしでは生きていけない程溺れていた。

キラ、私を愛して。

彼を利用するためだった偽りの言葉は、今は本物になってしまい、彼女はあの時と全く同じ言葉を全く違う想いで彼に伝えている。





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