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短編
お前の前だと調子狂うんだよ





結局眠れなかった。


隣りで眠っている真人をじろりと見る。

俺を嫌っているはずのこの男は、こうして無防備に眠りこける。

いつ襲われるかも分かったもんじゃねえのに。




「−−ふう」



とりあえず今から風呂に入って、頭をスッキリさせたらスーツを着てさっさと本部へ向かおう。

こういうときは仕事をするのが一番いい。ムシャクシャも晴れる。



障子を開けば朝陽が差し込んで少し眩しかった。

徹夜明けが続いても平気だったのは数年前まで。
今じゃ四日も徹夜すれば辛い。


コキコキと首を鳴らしながら敷居をまたいだとき、後ろでもぞりと動いた。



「ん…」


「真人?」



振り返れば真人は眠そうに目をこすりながら身を起こしていた。

そういえば真人を買ってから抱かずに夜を迎えたのは初めてだった。

疲れが少ないから目が覚めたのだろう。

真人はふと俺を見て、ふわり、と笑った。




「おはようございます、組長さん」






ああ、もう、何故だ。

もうコイツとは離れるべきだ。さっさとシークレットにでも降ろすべきだ。



なのに、体は勝手に動く。



「あ・・・」



味わった唇の感触。
気づけば、塞いでいた。

触れるだけの幼稚なキスだった。





「お前の前だと、調子が狂うんだ」






だからもう出てくるな。


そう、頭ではわかっているのに。




もしかして俺は


手遅れだったのかもしれない。













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