短編
たまたま不調だっただけだ
翌日案の定真人は腹を壊した。
精液を腹の中に留めてればそうだろうと自分勝手に思いながら適当に女を選ぶ。
どっかのホステスらしいが名前も覚えていない女だった。けれどその肢体と顔は確かにいいものだ。
部下に用意させたホテルにやってきた女を見て俺は思った。
「−−疲れている。動け」
艶やかな笑みを浮かべる女に手短に命じる。
新しい愛人を作ろうか。そういえばこの女愛人のひとりだった気がしないでもない。
「いつもそういうわね」
「−−」
やっぱりそうだった。
部下が気を利かせたのか。
女は「忘れたの?酷い人ね。小百合よ」と名乗りながらドレスを脱いだ。
服の上からも思ったがイイ女だ。
ソファに座る俺に女が腕を絡みつかせる。
柔らかい体。香るセクシーな香水。艶やかな吐息。
だが俺は眉根を寄せた。
この違和感は何だ?
鼻につく化粧の香り。塗られたルージュにファンデーション。人工的な匂いが纏わりつく。
「−−」
不快、だった。
女がくわえようと触ろうと全く反応しない。
可笑しい。
何故違和感など感じているのか。
女の愛撫には覚えがある。確かに何回か抱いた女だ。
今日に限って…。
俺はいらだって女を押しのけた。
「きゃっ」
「不快だ。帰る」
「ちょっ…」
「金なら部下に受け取れ」
イライラする。
顔も見たくない。
何故だ。
きっと、今日は、不調なんだ。
そう思いながら待たせていたリムジンに乗り込む。
イライラは治まりそうもなかった。
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