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そこには、盗品のドールや拷問器具や、その全てがごちゃごちゃと並べられていた。
よくこんなところに、全て顔が見えるように展示出来たものだ。

「君は警察にも言い上げれる立場じゃないからね、話しておこうかな。僕ってさ、随分ちっちゃいころから女装癖があるんだよね」
「――…そのヒラヒラフリフリ…は、つまりそういうことか」
「うん。中学ん頃は毎年、文化祭の女装コンテストで優勝してたよ。いつの間にか、こういう、乙女趣味になっちゃってねぇ」

それなら、ドールやらロリータ服やらは合点がいく。しかしミステリー小説や拷問器具は何に使うのだろうか。

「…ああ、ミステリー小説は怪奇なのが凄くイイ。拷問器具は別に自分で使うんじゃないよ、飾るだけ。ほら、背徳的な耽美さがあるでしょ」
「わかんねえ」
「とにかく僕は、いつまでも少女のままでいる人形達が大好きなんだよね。…どうせ君は、価値があるからアレを盗るんだろうけど」
「…まあな」
 
アレ、というのは、今度お互いが狙っている、国内の有名ドールアーティストの人形。総額1500万とかいう値段だ。既に故人である彼女の人形は通常でも100万は下らない。それが、最高級の材質でより美しく作ったものを展示してある。盗む目的は違うものの、それなりの価値があるものだ。

「一度写真で見ただけで惚れちゃったよ。今まで見た中で、一番綺麗だった」
「…そういうのはよく分からんが、俺だって手を引く気は無いぞ」
「今まで被ったこと無かったからねえ。面倒臭いったらないよ」

二十面相は溜め息をつく。しかしそれも束の間にすぐにベリルに向き直ると、唐突に笑顔を振り撒いた。

「ま、アレに対する情熱は僕の方が上だけどねー。何を言われても、僕はアレを盗るよ」

「…っ、そうかよ。…?」

力んでばん、と手を振り下ろすと、グシャ、という音がした。
恐る恐る見ると、自分とはまったく縁のない不可思議な物体。

「せ…生理用品…?」
「あ、ベリちゃん何やってんの。潰さないでよ」
「ベリちゃんって言うな!」
「じゃあ名前なんていうの?」
「え、和博…」
「へえ。僕は翼(たすく)」
「じゃなくて、なんだよコレ!まさかの女オチだったりすんのか!?」
「やー、違う違う。エロティシズムは初歩だよ初歩。乙女は清廉潔白よりも、汚れた醜さがTHE・背徳感…」
「分かった、お前ただの変態だろう!」

「ふふ、今頃気付いたの?」

翼はにやにや笑い、つつ、と和博に近寄った。


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