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夢を見るわけでもない浅い眠りから覚めた。ぼーっと外を見るとまだ暗い。
と、その時に、薄暗い視界に入った人間を確認して頭も冴えた。
急いで身を起こす。

「…呉真……」
「あ、お早う御座います」

此処は何処かとか、何でこんなことをとか、聞きたいことは山ほどある。でも其れを聞くより先に、呉真がずい、と顔を寄せた。
思わず言葉に詰まる。

「…っなに」
「俺のこと嫌いですか?」
「は…?」

突拍子もない問いに、思わず気の抜けた声が出る。
散々考えを廻らせると、たぶんコイツはただ自分が嫌いだから法案に反対するのか、と聞いているに違いない。
私は先刻の話をすっとばかされたと思い、怪訝そうに眉を潜める。

「どっちかと言ったら、嫌いだ」

そりゃあ薬らしきものを一服盛られて、挙句に知らない場所に拉致されたんじゃ、余程寛大な人間で無い限り嫌いじゃないとは言えないだろう。

「でも其れは、」

法案のこととは関係無い、と言おうとしたが、其れは叶わなかった。息をつく間もなく視界が反転する。
突然呉真が覆い被さって来て、起き上がったばかりの寝台に頭を打ち付けた。

「いッ…!」
「なら、力ずくにでも」

両腕を寝台に押さえ付けられ、視線がかち合う。

(…なんだ、この状況)

起き上がろうとするものの、力が強くてびくともしない。
瞬時に理解するには至らなかった。が、ある程度危機とした状態だというのは分かる。

「…っ、呉…」
「綺麗な金の髪だ」
「き、貴様…っ!」

背筋を這うような台詞に、怒りか羞恥か、さっと顔が熱くなる。
いよいよ嫌な予感が頭をよぎった。
必死にでも抵抗した方がいい、と気付いてからでは遅すぎた。其処に置いてあったらしい縄で腕を拘束される。

「ふざけ、っ!」

声を出そうとした。はずなのに、言葉を紡ぐ前に呉真が唇を合わせた。驚きの余り目を見開く。抵抗すら忘れて瞬きをしていると、

「劉殿、接吻の時ぐらい目瞑ったらどうですか」
「なっ…」
 
随分な言い分に、キッと睨みつける。
まさか、とは思っていたが、どうやら呉真には男色の気があるらしい。
私はそんなの真っ平御免だということは説明しなくても奴には伝わるだろう。伝わらない筈がない。こういうのを、一般的に強姦というんじゃないのか。
今まで他人に言い寄られたことが無かったわけではない。部下には問答無用で張り倒し、上司には丁重にお断りしていた。
其れが普通の反応だろう。


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あきゅろす。
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