8 ため息をつくと、運転席に戻った。 「…申し訳、ありません。あんな輩に、所長が汚されたと思うと、悔しくて」 「…和田木……ごめん、僕が至らないばっかりに」 「滅相もない、俺が悪いんです。力及ばす…」 あああ、もう、調子狂うなあ。 和田木が謝ることなんてひとつもないんだよ。多分、全部僕が悪いんだよ。 それなのに。 「俺、所長が好きです。貴方を誰にも、渡したくなかった」 「……っ、」 やめて。 もう手遅れみたいな言い方。 僕だって、君が好きだと思う。頼りになるし、安心出来る。でもそれが恋愛感情としてかは、ちょっと分からない。 でも、和田木が助けてくれて、凄く、格好良いと思ったんだ。 「…和田木」 「…はい」 「綺麗にしてからなら、別にいいよ…?」 「…え…!」 「うわっ、ちょっと、危ないなあ!安全運転してよ!」 人通りの少ない夜道だが、そんなにハンドル切ったら危ないだろ。 なんて、当たり前のことを考えながら、僕は笑った。 「今度から、僕から離れるなよ」 「はい、」 ――助手の仕事に、ボディーガードが増えた一日だった。 [*前へ] |