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最近、確実に変わったことがある。
暇さえあれば楓…いや劉殿が纏わりついてくるようになった。
其れが恋愛感情ならどんなに良かったか、彼曰く、
 
「お前みたいに他人から抜きん出てるとな、基礎を見失いがちなんだよ。だから初心に戻ることが大切」
 
らしい。
其れで先輩根性とでも言うのか、書物を持って来ては広げ、政界が動いては意見を強要し、とにかく俺の為と言わんばかりに相手をしてくる。
しかし其れが迷惑と思ったことは一度も無い。劉殿の話はひとつひとつが深いし面白い。何より一緒に居れるだけで、こっちとしては天にも昇る思い…とまあ此れを言うと怒られるだろうから言わないが。
 
こんな経緯で、一日のうちほとんどを共に過ごすことが多くなった。
しかし、今日はなんだか違った。
 
(…来ない……)
 
いつもならこの時間――昼前には必ず一・二度顔を合わせている筈なのだが、今日は一度も会わなかった。
そして彼と漸く会ったのは昼過ぎのことであった。
 
「……どうしたんですか、顔…」
 
あまりにも会話が少なく何かあったのかと思い凝視すると、顔を手で押さえていた。
 
「…殴られた」
「殴ら…!ッうわ、赤くなってるじゃないですか…!」
 
劉殿は嫌がっていたが、無理矢理手をどかして冷やしてやる。
此の綺麗な顔を容赦なく殴れる人類等地球上に居るだろうか、もし居たとしても其れは特殊性癖な奴しかいないだろう。
 
「あの、どうして」
「どうせお前の所為だろうが、馬鹿野郎!」
「…は……?」
「しらばっくれやがって…」
 
劉殿が人差し指で自分の首筋を差した。
…あ、そういえば昨日劉殿が寝てる時に痕付けた気がする。
 
「あー、あまりにも可愛らしい寝顔だったので、つい」
「ついじゃない!お前、私の兄さまのことは知っているだろう?」
 
劉殿の兄上と言えば、天子様が飼ってる劉可のことだ。なんでも今の天子は男色家らしく、気に入ってる劉可を職務にも付かせず四六時中傍らに置いているらしい。まるでその気の無い劉殿とは正反対で、情事すら完璧にやりこなす床上手だと。風の噂では加虐趣味があるとかないとか。
 
「ええ、知ってます…けど」
 
其れが何の関係があるのか。
と、よくよく話を聞いてみると、結構昔から政界の上層部のご機嫌取りとして、劉殿によく相手を頼んでいたらしい。
しかしまあ劉殿は見たとおりの真面目な人なので其れを全部断っていたわけだ。
そんなわけで、首筋にそんな痕が付いていたら、憤慨するのも想像に容易かった。
確かに、身内でもない限り此の人の顔を殴るなんて神業は出来ないだろう。
 
「あの、…そ、れは…すみませんでした」
「…別に、もういい…けど」

心配になって思わず頬をさすると、ふいと視線をそらされる。


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あきゅろす。
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