終わらない世界の中で
03
「よくも毎日学校来るね」
『雲雀もな』
皮肉を込めた言葉にカチンときたがそれだけで返す言葉が思い浮かばない。授業に出ないなら来る意味ないだろうに。
行き着く先は結局応接室。彼なら快く、かは分からないが受け入れてくれるし授業に出ろとも言わない。保健室もだが今は眠くないのでパス。
ふかふかなソファに凭れ掛かっていると雲雀が隣のソファへ腰を下ろした。
「最近怪我はしなくなったみたいだね」
『そりゃあまぁ…誰かさんのお陰で』
地味な嫌がらせは続いてるが。ありもしない噂流されたり今朝のように俺の席無かったり…そろそろ机と椅子用意してくれたかな。
「やり返せばいい」
『俺が?強そうに見える?』
「見えない」
『うわ、即答』
自分から言っといてあれだがそこまでハッキリ言われると流石にへこむ。…素手でやり合ったら確かに弱い、のかな…。ほら、素手で殴ると手痛いじゃん。メリケンサック付けてても痛そう。殴った後の振動とかで。
『一応マフィアなんだけどなぁ…』
「人を殺すの?」
『依頼があればね』
「信じられないな、こんなに君は弱いのに」
『弱くないつもりなんだけど…』
「弱いよ。今にも壊れてしまいそうな程に」
あ、と声を上げるとあっさり押し倒された。
「抵抗しないんだ、」
『無駄だって分かってるから』
「利口だね」
顔が近いなと思ったら耳に噛ぶり付かれた。じわっと痛みが耳全体に伝わる。それと柔らかい彼の髪の毛が顔や首元に当たって擽ったい。
『痛いよ』
「蓮の顔見ると苛めたくなる」
『えー何それ』
まさかのS発言。本気なのか嘘なのか狂気染みた目が私を射る。
彼と居ると自分がとても汚く見える。交わってはいけない表と裏の人間。
「蓮は馬鹿だ」
耳元で熱の籠った声が響く。
『あれ?さっきと言ってること違うぞ』
あはは、なんて乾いた笑みを浮かべたが彼は無表情なまま。たまにそれが怒ってるように感じる。
「そこまでして来る目的は?」
『今日はやけに質問が多いね』
気分だよ、と言われたので『そう』とだけ返し質問に答えた。お喋りなのも珍しい。
『十代目の護衛、言ってなかったっけ』
「初めて聞いた。言っていいの?」
『雲雀だからいいかなと。聞いたのそっちじゃん』
「そうだったね」
確かに一般人に言うのは間違ってる。でも変装もバレてる訳だし彼は他言する奴じゃない。あ、十代目が誰か、なんなのか説明してないがそこんとこも分かってるのかな。一応リボーンや沢田達と接触はあったみたいだが。まぁ一目で男装してると分かったんだ、普通じゃない。
…あーあ、短期間でここまで信用してる自分が馬鹿らしい。いっそこのまま本物の馬鹿になれたら…。
突然ドアをコンコンと叩く音が聞こえ雲雀が立ち上がり返事をすると草壁さんが入ってきて喋り出す。何かを報告してるようだった。俺には関係ないことなのでボーッとしていると草壁さんが出ていき雲雀はまた隣に座った。
『ヒカル』
何それ、みたいな顔してる。
『私の名前』
雲雀の肩から降りた黄色い鳥を撫でてると名前を呼ばれたから振り向いたんだ、そしたら。
「ヒカル」
先程よりも彼の顔が近くにあって唇に柔らかい感触があった。キスされた。本当に突然のことで理解するのに少し時間が掛かってしまった。
「今日の君は本当に変だ。いつもより無防備すぎる」
『雲雀だからだよ』
後から顔が熱くなってくる。恥ずかしい、見られたくない。少しの抵抗と彼に背を向け黄色い鳥を手に乗せ撫でる。
「嬉しくないな…」
(全てとは言わない、君が欲しい。
例え心が手に入らなくとも。)
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