終わらない世界の中で
02
…困る。本当に困る。何がかって?ボンゴレの屋敷は馬鹿みたいに大きい。中も広いし当たり前の様に部屋が沢山ある。廊下も長い。果てしなく続いてる…だから迷いやすいんだ。それに探してる人物の部屋も見つけにくい。地図とか立て札あればいいんだけどあるわけもなく…ああ、困った。長い間ここに居るとはいえ慣れない。慣れてたまるか!まぁ、九代目の部屋は大体覚えてるけど。覚えてるというより勘だ勘。
何十分探し回ったか分らないが(それほど時間は経ってない筈)やっと見つけ二度ノックをし、返事が聞こえると遠慮がちに扉を開けた。
カチャ
『失礼します…九代目?』
小さな声で恐る恐る入った。
考えてみれば九代目と会うなんて久しぶりだ。最近仕事が忙しいみたいで…邪魔しちゃいけないと思い自分から話しかけられなかった。
「ヒカル、待っていたよ」
『お久しぶりです。今回その…呼ばれたのは任務についてですか?』
「あぁ。日本へ行ってほしいんだ」
『日本…ですか』
なんでまた日本なんかに…確か前にリボーンが行った所だったけ。家庭教師とかなんか。
ディーノに暫く会えなくなるんだ…約束なんてするんじゃなかった。
「ああ。そこにいるボンゴレ十代目候補の護衛を頼む。そろそろ命を狙われてもおかしくないからな」
『私なんかで大丈夫でしょうか、護衛なんて』
「なぁに心配しなくても大丈夫じゃよ。君はちゃんと実力がある。それに護衛するのはヒカルと同い年だ、馴染みやすいだろう」
十代目候補なんて護衛する理由あるのか…。それに十代目はザンザスがなるモノばかりと思っていた。今一番ボスに相応しいのは間違なくザンザスしかいないから。他の人もいるが何かが足りない。
「それと、」
『はい』
「あの子の傍にずっといてほしい。これは願いだ」
『それは一体どういう意味ですか…私っ…』
「そんな悲しい顔をしないでくれ。今まで私に仕えてくれた様に次はボンゴレを継ぐ者の傍にいてほしい」
『でも私は…っ…九代目に助けられてばかりで何も…』
いつだってそう。九代目は優しかった。ボンゴレの人達はみな優しかったんだ。
「ヒカル…」
『…でも九代目の…願いというなら日本へ行って十代目候補の護衛をします』
「ありがとう、沢田綱吉を頼む」
慈愛に満ちた微笑み。今日まで九代目の傍にいれて本当に良かった。
「ヒカル。それともう一つあるんだが…」
『分かってます。勿論変装して行きます。幾らなんでも女に守られるのは恥ずかしいですから』
いつものように身を隠すのだ。
そう、いつものように。
「はぁー」
何もしてないのに自然とため息が出る。理由はリボーンの事。あいつが来てからろくな事がない。
授業の終わりを告げる鐘が鳴りそれが聞こえると教師はさっさと授業を終わらせ生徒達は待ってましたとばかりに席を立ち友達と騒いだり話したり様々。
んで特にやる事もない俺は席に着いたまま一人ぼーっとしている。
「なぁ、ツナ」
そんな俺に話し掛けて来たのは山本。リボーンが来てから唯一良い事と言えば山本という友達ができた事だ。後は京子ちゃんと少し話すようになった事かな。
「ん?何山本」
「今度転校生来るらしいぜ」
「そうなんだ、だから席が一つ多いのか…」
空いてる席を見ると僕の近く…。でも転校って変な時期にしてくるなぁ、後少しで夏休みが始まるのに。友達に慣れるかな。
「その転校生って男?女?」
「噂だと男らしいですよ!」
「ごっ獄寺君…」
息を切らして突然僕の前に現れるから驚いた。
…もう一人、獄寺君も俺の友達だ。初めて会った時は殺されそうになったが今となっては良い思い出…でもないな。苦い思い出が一つ増えた。
「そうなのな」
山本を睨みつける獄寺君をものともせずハハッと笑う山本は太陽みたく眩しい。
「どんな人が来るんだろう。楽しみだな…」
転校生なんて獄寺君以来だ。期待に胸を膨らませた。
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