終わらない世界の中で
01
『いやぁあああああ!!!』
バタンッ
部屋中に響き渡る少女の叫び声を聞き慌てて駆けつけた青年が壊れるんじゃないかというくらいの勢いでドアを開けた。
「どうした!!」
悲鳴を上げる少女に青年は駆け寄ったが少女は気が動転して焦点が定まらない目で誰と分からず、いつも装備している銃をためらいもなく相手に向けた。
「おっおい、俺だって俺!銃下ろせよ…」
『…ごめん、ディーノ』
その声でやっと気づく。
私とした事が…大事な人に銃を向けるなんてどうかしてる。それに睡魔に勝てず少しだけ寝ようと思ったら辺りは夕暮れ。結構寝てしまっていたようだ。
「どうしたんだ。急に叫び声なんて…」
『ううん。なんでもないの』
「なんでもねぇわけないだろ?そんな顔して…」
彼女は泣きそうな…辛そうな顔をしている。それを無理に笑顔で隠してる。
『…ただ、昔の夢をみただけ。もしかして心配してくれたの?』
「なっ!そ…そりゃあ…その…」
『ありがとう』
ニコりと微笑む。
本当優しいなぁディーノは。顔がみるみるうちに赤くなってる。
「だから俺は…!」
『心配してくれたんだよね?急に銃なんか向けてごめん』
そっと銃を元あった場所に戻した。
「ヒカル…無理しなくてもいいんだぜ?一人で抱えないでもっと俺を頼っても、」
『はいはい。私は大丈夫だから』
何を思ったのかギュウッと抱きしめられた。フワッと鼻をくすぐる様な甘い匂いがする。それに温かい…直に体温を感じる。背中に回される腕に私もディーノを抱きしめた。あれ、こんなに大きかったかな。私が縮んだ…わけないか。最近じゃ身長も全く伸びなくなり身長の差はかなりある。ふとした時にやっぱり私とは違う、男の子だなぁなんて思う。
「なんかあったら俺に言えよ」
『うん。分かった』
「心配なんだ…」
『私いつまでも子供じゃないよ』
彼からしてみればまだまだ子供かもしれないが。
「分ってるけど…!」
『大丈夫。何かあればディーノが守ってくれるんでしょ?』
「……当たり前だ」
本当に優しい。初めてここに来た時も余所者の私を疑いもせず受け入れてくれた。たまに過保護だけど…だがそれが彼の良いところ。
『そういえばどうしてここにいるの?』
「いやたまたまな。九代目に用があったんだ。そしたらヒカルの叫び声が聞こえて…」
『…ごめん。廊下まで聞こえてたんだ…』
「謝る事じゃねーって。それと九代目がお前の事呼んでたぞ?」
『え、それを早く言ってよ!急がなきゃ』
ディーノから離れソファから腰を上げ立ち上がる。
俺からヒカルが離れていく…それを拒む様に気づいたら腕を掴んでいた。
『ディーノ?』
「なぁヒカル」
『ん?』
「今度…二人で出掛けないか?」
『そう言ってまた急な仕事入って行けなくなるんでしょ?』
誘われたのは何も今日が初めてではない。以前に数回誘われたが毎回全部仕事が入り(勿論ディーノの)謝罪の電話がきて終わった。
「今度は絶対開けるから!」
『よし絶対だよ!約束ね!楽しみにしてるから。じゃまた後で』
「あぁ…」
近くに掛けて置いたカーディガンを羽織り慌ただしく部屋を出た。
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