終わらない世界の中で
06
『来た理由それだけじゃないんでしょ?』
「あー…その、一緒に昨日の廃病院に来てほしいんだが…」
『嫌だ』
だよなー…なんて落胆するなら聞かなければいいのに。振ったのは私だけど。
「一人で行くか…」
『その顔で行くの?鏡見た方がいいよ』
「お前もな」
どこが変なのかと口に出す前に「目腫れてる」と言われた。…やっぱり。
「来てくれたらかなり助かるんだが…獄寺と山本にも説明した方がいいだろ?ツナの護衛とリングのこと」
『リングについて私も詳しく知らない。護衛のことはいずれ彼から言うだろうし』
「他人任せだな」
『面倒なことになりたくないだけ』
山本は置いといて獄寺は発狂して爆弾投げてきそう。
「どうしても嫌か?」
そんな目で見ないでよ、断りにくくなっちゃう。
『…付ついてくだけなら』
ディーノの顔が輝いた。結局こうなる。私ってディーノに弱かったっけ。
タイミングよく黒のスーツを着たロマーリオが高級車で迎えに来た。朝からこんな住宅街で…目立つ。ロマーリオが何か言ってディーノが照れたように声を上げてたが内容は聞こえなかった。地獄耳だったら…。促され後ろの席に乗り込んだ。
そういえば、と昨日街で起こったことを思い出す。
『リング偽物ってバレたらヤバイんじゃない?』
怒り狂ったザンザスがスクアーロに八つ当たりする姿を安易に想像できて笑える。それほど奴は短気で怒りっぽい。
「あれは良くできてるから十日はバレねぇよ。それに十日もあれば大丈夫だ」
『…何する気』
「来れば分かる。そろそろ着くぜ」
車だと本当速い。徒歩だと20分は掛かりそうだが5分で目的地に着いた。
そのまま廃病院へ入ろうとするディーノを引き止めた。
「なんだ?」
『…なんでもない。よし大丈夫!』
手形消えて…ないけど言われなければ気づかない程目立たなくなってる。これなら問題ない。私の言動に意味が分からないと怪訝な顔をしていたが深く問い詰めず歩き出す彼を先頭に後から付いていく。そっと隣に並び話し掛けてきたのはロマーリオだった。
「ボスの頬叩いたのはヒカルさんか?」
『うん』
「なら泣かせたのはうちのボスか…」
『まあ…』
「すまねぇな」
『ロマーリオが謝ることじゃ…ってちょっと笑ってない?』
絶対面白いと思ってる。
「悪い。でもな、本当に心配してるんだ。それは理解してくれ」
『分かってる』
分かってるつもり。
「二人で何喋ってんだ。先行くぞ」
『今行くー!』
彼の元へ走っていきドンッとディーノの背中に抱きついた。
「うおっ!!」
『ちょっ、ちゃんと受け止めてよ危ない』
「いきなり抱きつくなっての!」
「(こうして見るとまだまだ子供だな…)」
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