終わらない世界の中で
05
私に存在する意義なんてものはない。
そうでしょう?だって私は――
私は、私は私は私は私は…一体なんなんだろう。なんの為に生きてる?九代目に、ボンゴレに忠誠を誓ったから?違う、そんなのじゃない。自問自答しては自身の求める答えは出ない。
いつの間にか涙は止まり頬を伝って流れていた涙は乾いていた。窓に目を向けると既に外は暗く闇に覆われ彼が出て行ってから数時間経っていることが分かる。部屋の明かりを付けずカーテンも閉めないまま床に座ったまま膝を抱え込み体育座りをし顔を附せた。
今までずっと監視されてたことに気づかなかった。否、薄々だが勘気づいてはいた。だけど認めるのが怖くて気づかないふりをしてたんだ。なのに今までのうのうと暮らし…数年間一緒にいたとはいえ信用されてなかった。私だけ彼等を受け入れて信じて…本物の馬鹿だ。そう思うとまた目が潤んでくる。いくら泣いても涙は枯れやしない。
拭いきれぬ淡い想いを持ちながら本棚天井照明器具テーブルの下等…盗聴機やカメラが仕込まれていないか捜せば先程の想いを裏切るように数個出てきた。何もかも嫌になり其れを床へ投げ本棚を倒しパソコンも床へ落としとにかく目につく物全てをぐちゃぐちゃに散らかした。
だが心は晴れず重く深い蟠りが出来たまま。
いっそのこと死んでしまおうか。
傍に置いてある拳銃を手に持ち眺めた。死ねば柵に囚われることもなく何も考えなくていい。生きていくよりずっと楽だ。頭に突き付け構え引き金を引けば簡単に死ねる。なのにそうしないのは弱いから。まだ死にたくないと思うなんて…。自身を嘲笑し拳銃をテーブルに置きソファに沈んだ。
『骸…』
貴方に会いたい。そして今すぐ抱き締めたい。貴方が必要なんだ。私一人じゃ…生きていけないよ…。
目を開けると朝だった。泣き疲れてソファに座ったまま眠ってしまったようだ。周りを見渡すと昨日散らかしたままなので空き巣に入られたよりも悲惨な状態になっている。
片付けが面倒だな…。溜め息を吐き少し、少しだけ昨日やったことを後悔した。
久しぶりに沢山泣いた。嗚咽を漏らし思いきり涙を流した。そのせいか喉も痛い。何年ぶりだろう、最後に泣いたのがいつだったか忘れてしまった。
暫くの間想い耽り無言のまま過ごした。ふと時計を見ればまだ時間はあり、シャワーを浴び終え軽く朝食を食べ制服に着替える。あとは鞄を持ち靴を履いて学校に行くだけ。
だがこんな顔で行きたくない。鏡で見た顔は酷く瞼は腫れて重い二重になっていたのだ。雲雀に会いたくなりここまで準備したが………あああ昨日ちゃんと目冷やせば良かったなんて今更思ってももう遅い。
大丈夫気にならない!そう自分に言い聞かせ玄関のドアを開けた。
開けたが閉めた。
見間違えかもしれない、そう思いもう一度開ければやはり今最も…一生会いたくなかった人物が立っていた。
「よ、よう」
『邪魔』
一切目を見ず口を開いた。本当は会話もしたくない。だがドアの前に立たれては学校へ行けない。早く退けろ。
「悪かった」
言葉と同時に頭を下げた。ソレをぼんやり数秒見つめた。
『昨日の今日で来るなんてどんな神経してんの』
「悪い…」
『キモい馬鹿アホ』
「ヒカルの言う通りだ」
『………頭上げて』
「ヒカル…」
『歯食いしばれ』
「え」
思いっきり平手で叩いた。拳でも良かったが生憎メリケンサック持っていなかったから。
「…っ!」
パンッと良い音が鳴った。流石私、スッキリしたほんの少しだけ。鈍い音だったらもう一回叩いてたかも。
『あと駅前のケーキ全種類買ってくれたら許してあげる』
「なんでも買うぜ。………ありがとう」
お礼言われるようなことしてないんだけど…もしかしてマゾ?キモ。よし、なら追加で新しいパソコンと服と拳銃と…。あ、綺麗に手形の跡付いてる。物凄く写メりたい。
『いつからいたの?』
「………朝だ」
その間はなんだろう。
『へぇ』
「本当だからな!」
『別に嘘なんて言ってないじゃん』
一晩中居た訳ないよね?何挙動不審になってんだろう、変な人。笑ったら笑うなよと顔赤くしながら言われたので余計に笑ってしまった。
あー…なんて単純な。一日で仲直りなんて子供みたい。子供だけど…。
『…これで昨日あったこと全部なしね』
「ヒカル…俺は」
『ごめん…私のこと考えてくれてたんだよね』
痛かったよね。赤くなった頬にそっと手を寄せ触れれば熱くなっていた。その手を握られ彼の体へ引き寄せられる。
「俺こそ悪かった…」
抱き締められた。私もそっと背中に手を回す。
ディーノは知らないんだ、私が根に持つ性分だってこと。
(例えば君に好きだと言えたなら)
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