終わらない世界の中で
03
気絶した青年は今目の前のベッドで眠っている。暫く起きそうにない。ロマーリオさんが言うに彼の傷は浅く命に別状はないみたいだ。あ、名前はバジルというらしい。バジルって確か門外顧問の…。
「リボーンとディーノさんと普通に話してるけどどういう関係なんだよ!」
怒鳴り声で我に返った。おおっと、いけない忘れてた。
「まだ教えてなかったのか?」
『俺は何も言ってないな…。リボーンから聞いてない?』
「全く話しについていけないんだけど」
「自分の口から言うのが一番だと思ってな」
ただ単に言うのが面倒だったんじゃないのか。
『九代目からの命で沢田綱吉の護衛してるヒカルです』
「うっ嘘ぉおお!!?」
予想通りの反応だあはは、面白い。オーバーリアクション過ぎてウザいが。
「それじゃあ蓮って言うのは」
『偽名』
「ヒカルが本名?」
『さあ』
「だよな…女みたいな名前だし…って違う!俺は反対だからな!こんな奴が護衛なんて!!」
「オイオイ、ヒカルはボンゴレの中でも群を抜く有能なマフィアだぜ。腕なら俺が保証する」
「でもディーノさん、こいつは…!ともかく俺は嫌だ!」
ディーノがフォローしてくれたが意味がなかった。
「ヒカル…お前何やらかしたんだ」
呆れた目で見つめられたが今説明するのも面倒。聞いたら馬鹿らしくて笑うだろうな。
『別に何も。邪魔みたいだから帰る』
「残れ」
扉の前に立ちはだかり通さないつもりらしいが小さいから普通に通れるんだけど…。一応理由聞こう。
『なんで』
「大事な話だ」
『具体的に』
「あのリングが動き出したんだ」
『それなら尚更俺関係ないじゃん』
「まぁ話くらい聞いてけって」
ディーノが言うなら…。あからさまに不機嫌な沢田を無視し渋々病室に残った。
「リングってこの子も言ってた。ロン毛の奴が奪ってったヤツだろ?」
「ああ。正式名をハーフボンゴレリングというんだ」
本来なら三年後までしかるべき場所で保管される筈だったボンゴレの家宝なのだが。
「長いボンゴレの歴史上この指輪の為にどれだけ血が流れたかわかんねーっていう曰く付きの代物だ」
「まじかよ!!ロン毛の人持ってってくれてよかったーっ」
「それがなあ…ツナ…。ここにあるんだ」
ディーノが手にしてる方が本物だと。さっきのは偽物ってことになるな。
『リングを届けに来たのか』
「お前なら既に知っていると思ったが…知らなかったのか?」
コクリと頷く。
最近パソコンの調子おかし何も情報は入ってきてない。
「ああ、俺は今日この為に来たんだ。ある人物からお前に渡すように頼まれてな」
それを聞いた途端冷や汗を掻き「家に帰って補習の勉強しなきゃ!」と言って慌ただしく病室を出て行った。逃げられる訳ないのに。
『はぁ……バジルは知ってたのかな』
自分が囮だってことに。
固く目を閉じ眠っている青年に目を向けると頬は傷だらけだった。
「恐らく本人も知らされてねえ」
「こうなることは読んでたんだろーが相当キツい決断だったと思うぜ。つーかこれ直接ツナに渡せばいいのにな。あの人俺と一緒に日本に来たんだぜ?」
「そーか…あいつ来たのか…」
あいつって誰…。沢田と親しい人物なら門外顧問だろうな。
『あ、そうだ』
危ない危ない忘れるとこだった。
『これ九代目から手紙来たんだけど読めなくて…』
「どれ、貸してみ」
ディーノに渡しディーノの肩に乗ったリボーンと二人で見る。
「……」
『なんて書いてある?』
「本当に九代目からだよな…」
「ちゃんと死炎印もある。これは勅命だぞ」
いやけど…なんてブツブツ言い俺の質問は無視か。
『お二人さん聞いてますか』
「どこにあった?」
やっと聞いてくれたと思えば逆質問かよ。
『玄関に落ちてた』
嘘は吐いてないのに吃驚された。普通なら勅命はもっと丁寧に渡されるらしいがんなの知らない。初めてだ。
『んで、どんな内容』
余程のことが記されているのかなんだか聞くのが躊躇われたが聞かなければ勅命の意味がない。早く、と視線を送ればディーノが言いづらそうに口を開いた。
「…簡単に要約すると、ツナの護衛を辞めザンザスの護衛をするように書いてある」
簡単に訳しすぎだろ。いや、突っ込むとこはそこじゃない。内容がぶっ飛び過ぎて俺の聞き間違いじゃないかと思ったがディーノの真剣な眼差しに息を飲んだ。
『有り得ない』
沈黙の中絞り出した声は小さく自分でも分かるほど情けなく震えていた。
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