終わらない世界の中で
04
獄寺side
苦しい、体が動かない。
敵はまだ二人いんのに我ながら情けねぇ…。
何が十代目の右腕だ…何の役にも立っちゃいねえじゃねーか…くそっ…!
不意に並盛の校歌を歌う黄色い鳥が視界に映った。
「へへっ…うちのダッセー校歌に愛着持ってんのは…おめーぐらいだぜ…」
右腕でなんとかダイナマイトを取り出し火を付け壁へ投げた。
数秒で爆発しコンクリートの壁は崩れ中から出てきたのは雲雀だった。
「…元気そーじゃねーか」
「もしかしてこの死に損ないが助っ人かー!?」
こいつの変な笑い声がうざってぇ…。
「自分ででれたけどまぁいいや」
相変わらず気に食わねえ奴…だが今は雲雀だけが頼りだ。
「そこの二匹は僕にくれるの?」
「ああ…」
「じゃあこのザコ二匹はいただくよ」
「好きにしやがれ」
仰向けに倒れてる俺の横を通り雲雀は敵二人に向かっていった。
立ち上がれない為どういう戦いをしたか見れなかったが直ぐにガラスの割れる音が聞こえ静かになった。どうやらあの煩い奴を倒したみたいだ。
それからも早かった。
帽子の奴も倒し雲雀の勝利で終わった。
ああ悔しい。俺に倒せなかった奴があいつにはこんな簡単に倒せてしまうのが悔しくて悲しくて虚しかった。大きな力の差を見せつけられた感じだ。
その後数分どうしようか考えていると足音が聞こえ近くで止まった。
敵かと思ったが雲雀が名前を呼び相手が誰か分かった。
最悪だ…一番会いたくない奴。いや、一生会いたくない。こんな無様な姿を見られるなんて死んだ方がマシに決まってる。俺なら間違いなく死を選ぶ。
その前に何故あいつがこんな所にいる?
意味が分からねえ。
階段から俺を見る奴と目が合った。
「なんでてめえがここに…っ」
『俺の勝手だろ』
また反論しようとしたがそれを雲雀に遮られた。
「蓮そんなのほっといて肩貸して」
雲雀も歩けないのか。
戦ってる時は生き生きしてたように感じだが気のせいか。
『なぁ、一人で歩ける?』
そのまま二人で行くのかと思ったが思ってもなかったことが声をかけられた。
『歩けないなら肩貸すけど…』
「誰がてめえの肩なんか借りるか!」
そんなの恥でしかない。
『一人じゃ歩けないだろ。それに早く沢田の所に行かなくていいの?』
「それはっ…」
奴の言う通りだ。十代目に限ってやられるってことはないだろうが心配でしょうがなかった。しかしだからといってムカつく奴の手借りて貸し作んのも嫌だ。だがここはやっぱり十代目を優先するしか…。
痺れを切らした雲雀が口を開いた。
「ねぇ、早くしてよ」
『よーし決定』
間の抜けた声で俺の返事も聞かず腕を取り支えながらなんとか立ち上がって腕を奴の首へ回し肩に乗せた。
「今回だけだからな…」
『はいはい。俺が好きでやってるって思えばいい』
俺と並ぶと小さかった。十代目より少し小さいとは思ってたが体も細い。まるで女みたいだった。
「ちっせぇ…」
『何がだよ』
「お前だ。ちゃんと飯食ってんのか?」
『当たり前』
心なしか横顔が女っぽく見えてきた。いやいや有り得ねぇ、こんな奴が女なわけない。
反対側に雲雀の腕を俺同様に首へ回し支え、何度もフラつき転びそうになりながらも歩き三階へ向かう。
俺一人支えるのも大変な筈なのに雲雀まで支えて…こんな小さい奴にどこまで力があるんだか不思議だ。
忘れてはいけない、こいつは今まで最低なことをしてきたんだ。
そんなことは分かってるが関われば関わるほどどうしても酷いことをやるような奴には思えない。
考えれば考えるほど分からない。
それからは無言で歩いた。
(誰が正義で何が真実なのかなんて分からない、分かりたくない)
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