終わらない世界の中で
03
非常用ハシゴを登った。
二階も一階と変わらず瓦礫が散乱していた。歩くたびにパキッと音が鳴る。ボウリング場だったみたいだがここにはいないみたいだ。
雲雀の姿もない。あいつのことだから無事だろうけどどこにいったんだ…。千種に聞けば良かった。素直に教えてくれそうだが怪しまれそうだな…聞かなくて正解だったかも。
三階は映画館らしく一、二階より比較的綺麗だった。綺麗だといっても所々ゴミは落ちてるし錆び付いてはいる。
扉に手を掛けた。
少し開いた隙間から中を覗くと少年が一人真ん中に置かれたソファーに座っていた。
黒曜中の制服を着ているが赤と紫のオッドアイ、見違える筈がない。あれは骸だ。
やっと会えた。この数年間どれだけ我慢したか…今すぐ彼のもとへ駆け寄って抱きつきたい。
だが後ろめたさがありどうしても近付けない。
こんなに近くにいるのに!
こんな自分が嫌になる。
後ろから数人の話し声が聞こえた。咄嗟に近くの物陰へ身を潜め誰だか確認すると沢田とビアンキとリボーンだった。
獄寺はどうしたんだろう、山本は負傷して動けないだろうし…。
それよりも千種は簡単にこの三人をここに通したのか。千種が心配になってきた。
三人は躊躇なく扉を開け中へと足を踏み入れた。
俺はその後ろ姿をただ見つめた。
すると突然下から爆発音が聞こえた。爆発といえば獄寺のダイナマイトしかない。
戦いに決着が着いたのだろうか…さて、二人の様子を見に行くか。
先程いた場所に行くと嫌に静かでダイナマイトのせいで煙いのと火薬で臭いがキツかった。顔を多少歪めながら階段へと進む。
ザッと物音がし振り向くと傷だらけの雲雀がフラつきながらトンファーを両手に立っていた。
俺の姿を見るなり名前を口にした。
「蓮…」
『雲雀、その傷…』
立ち上がり彼を見ると制服が血や土で汚れていた。
「心配ない。子犬と帽子の彼なら外で寝てるよ」
子犬とはきっと犬のこと。帽子は千種だな絶対。
雲雀のいう方に目をやると大きな窓ガラスが割れていてそこから外を覗くと犬と千種が倒れていた。
『雲雀がやったのか?』
「うん」
『そっか…』
彼を責めるつもりはない。
先に仕掛けてきた骸が悪いのだから。
「悲しい?」
『なんで?悲しくなんかないよ』
「泣きそうな顔してた」
彼の鋭い目が私を射抜く。
よく人の表情見てる。
目を逸らし階段の奥を見ると獄寺が倒れていたが目が合うなり減らず口。意識はあるようだ。
「なんでてめえがここに…っ」
『俺の勝手だろ』
また何か言おうとしたがそれを遮る様に雲雀が言った。
「蓮そんなのほっといて肩貸して」
一人じゃ歩けないんだ、と今は壁に背中を預けている。
ずっと一人で戦ってたんだ、無理もない。逆に元気だったら人間じゃない。一体身体の構造がどうなってるのか知りたい。
『なぁ、一人で歩ける?』
仰向けに倒れてる獄寺に話しかけたが明らかに嫌な顔をした。
『歩けないなら肩貸すけど…』
「誰がてめえの肩なんか借りるか!」
『一人じゃ歩けないだろ。それに早く沢田の所に行かなくていいの?』
「それはっ…」
黙り込んでしまった。彼なりに色々格闘してるみたいだ。だが中々答えを導きそうにない。
痺れを切らした雲雀が口を開いた。
「ねぇ、早くしてよ」
『よーし決定』
有無を言わせず獄寺の腕を取り支えながらなんとか立ち上がって腕を自分の首へ回し肩に乗せた。
「今回だけだからな…」
『はいはい。俺が好きでやってるって思えばいい』
それから大人しくなり意外に素直な獄寺に笑いたくなったのは秘密。
「ちっせぇ…」
『何がだよ』
「お前だ。ちゃんと飯食ってんのか?」
『当たり前』
失礼な奴だな…。
反対側に雲雀の腕を自分の首へ回しフラフラの二人を何回も転びそうになったがなんとか支えながらみんなのいる所へ歩いた。
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