終わらない世界の中で
04
一秒でも早く渡したくて廊下を走った。
何回か滑って転びそうになったり途中何人かにぶつかり先生に注意されたが軽く謝ってまた走り出す。
不意に思った。
そういえば山本何処にいるのか分からない…何も考えないで走ってた…。今の時間ならもう授業は終わってる筈だが。居るとしたら教室かな。誰かに聞こうかと考えたが誰も教えてくれる筈がない。でもこの広い校舎の中を探すのも一苦労。
どうしようか悩んでいたところ、ツナが通り過ぎた。慌てて名前を呼ぶ。
『あ、ツナ』
「気安く名前で呼ばないで」
『…ごめん。沢田』
もういつものツナじゃないんだ。なのに俺はどこかでツナなら…と感じていた。
『あの、山本どこにいるか知らない?』
「知らない」
即答…これはこれで悲しい。気まずい雰囲気を消したいが苦笑いしか出来ない。
『そっか、そうだよな…』
「今さら何の用だよ」
『…ユニフォーム渡そうと思って』
「何で…蓮がボロボロにしたんじゃないか!」
突然感情的になり声を荒げた。当然といえば当然。
『…沢田がそう思うならそれで構わない。ありのままの自分の気持ちを信じればいいよ』
信念を貫けばいい。
それで後悔しないのなら。
「…今の時間なら…」
『え?』
「部活してるから外にいると思う…」
呟きながら答える彼は下を向いてる為どんな表情をしてるのか分からない。
『ありがとう』
上手く笑えてるだろうか。
野球部の練習場所へ向かい歩いてると昇降口で肩からスポーツバッグを下げた山本を見つけた。
『山本!』
一瞬立ち止まってくれるかと思ったが振り向きもせず歩き続ける。
『お願い待って!』
手首を掴みやっと引き止めた。
「…んだよ」
俺が引き止めたせいで凄く不機嫌。だが負けない。
『これ、受け取って』
半端無理矢理押し付けた。そうでもしないと絶対受け取ってくれないから。
「ユニフォーム…」
『そ。俺が用意した訳じゃないけど…雲雀に頼んだんだ』
それだけ渡したかったと伝えた。
『これで試合出れるよな?』
「あ、あぁ」
思いも寄らぬ渡し物に拍子抜けしたのか信じられないといった様子だ。
『引き止めて悪かった。じゃ、練習頑張れよ』
走ってその場から去った。
雲雀には感謝しなくちゃ。
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