終わらない世界の中で
03
開かれた扉の前に立っていたのは初めて見る人だった。
「君達何やってるの?」
漆黒の髪に切れ目。一瞬綺麗だと思った。
上半身だけ体を起こして見上げると何故か並盛中の制服ではなく学ランを羽織っている。誰だろう?
「ひ、雲雀さん…!」
「いやっこれはその…」
先程まで俺の事を酷く罵倒していた癖にこの雲雀という奴の前では低姿勢。あー分かりやすい。相手は一人で数じゃこっちの方が勝ってるのに。
なんだっけ…聞いた事がある。風紀委員長で在りながら不良の雲雀恭弥。アイツには気をつけろっていつだかツナが言ってたっけ。
「普通なら授業時間なのに騒がしいから来てみれば…」
「すっすみません!」
「い、今から自習しますっ!」
何こいつ。クラスの連中がこんなに怯えてるなんて異常だ。それ程の奴なんだろうか…。独自の雰囲気はなんとも言えないが。
「…チッ」
わざとらしく獄寺が舌打ちする。どうやら諦めたようだ。
「へぇ…群がっていじめなんて良い度胸じゃないか」
「ひっ…」
生徒達は皆相当怯えてるのか顔が青ざめている。
「君…立てる?」
『へっ?あ、はい』
いきなり俺の元へ歩み寄ると話しかけるから驚いた。取り敢えず立たないと…。
『……っ』
立とうと膝に重心をかけると身体中に痛みが走る。骨がギシギシいってるのが分かる。
「無理に立たなくてもいい」
『え…っておい!』
俺の所まで来るとしゃがみ、何をするのかと思いきや所謂まさかのお姫様抱っこ。しかも軽々と。
物凄く恥ずかしい。今までに経験した事のないような恥ずかしさのあまり顔から火が出そう。
クラスの連中もその光景に唖然としてこっちを見てる。「雲雀さんが…」とかなんか聞こえる。
『ちょっ、いいから下ろせって』
「嫌だ」
『んなっ!』
そのまま抱き抱えられたまま教室を出て行った。
暫く廊下を歩きやっと口を開く。
『もういいから下ろせ』
「嫌だ」
『嫌じゃない!』
「君、顔赤いよ?」
相手はこの状況を楽しんでる様だった。
『それはお前のせいだろーが!!』
「いいからあまり暴れないで。それに一人じゃ歩けないでしょ?」
『……っ』
確かに今の状態じゃ一人じゃ歩けないかも。「暴れたら落とす」なんて言われれば返す言葉もみつからない。
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