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終わらない世界の中で
01




「失敗か」

そう呟くと白衣を着た大人は平気で子供を床へ投げつけた。酷く冷めた言葉。何も感じないのだろうか。
投げつけられた子供は血まみれだった。その姿に思わず目を逸らす。何度見ても慣れるモノじゃない。

「トニー!」そう呼ばれた少年は返事をしない。何にも反応が無い。もう既に意識が無く恐らく死んでいるのだろう。今日で一体何人目だ、命を落としたのは。…なんて残酷な。何故自分達のファミリーに実験体にされなくてはならないのか、あまりの不憫さに涙を流す者もいる。

次の犠牲者は誰だろう、大人達を見る目は最早畏怖の対象だった。
毎日次は自分じゃないかと怯えて生きている。

目に写るのはすぐ側で行われる惨い実験、聞こえるのは耳を劈く様な断末魔の叫びと嫌な機械音。麻酔を使わないので悲痛な叫びに思わず耳を塞ぎたくなる。「苦しい、苦しい」「助けて」そんな声が聞こえてくる様だ。
実験体にされた子供は内臓が弄られ抉られたり無残な姿になっている者や原型をとどめていない者も少なくない。
此所にいる子供達は親に捨てられたり皆居場所が無く此所に居る。毎日が生き地獄。これよりも辛く苦しい事なんてあるのだろうか?

もう生きてる意味なんてない。私達に明日なんてない。今日死ぬかもしれないのだから。これがいつの日からか日常に変わった。当たり前の光景、当たり前の出来事。…頭がおかしくなりそうだ。いや、もう既に狂ってるのかも。思考が麻痺してる。

何が名誉に思えだ!禁弾を作ったおかげで人でなしのレッテルを貼られ他のマフィアから酷い迫害を受けてきた。外に出れば銃を突き付けられ撃たれる。そのせいで…新しい特殊兵器を開発すれば再び栄光を掴めると思ってる。その為子供を利用する。

イカれてる…ここの大人達は人間じゃない!!



最早反論する気もない。口を挟んだところで聞いてもらえないのは分かってるし今よりも酷い実験をされるに違いない。
…まだ前の傷口が塞がってないのに。この痛みも生きてる証だと言うのなら私は痛みを感じない死を選ぶ。死ねば痛い思いをしなくて済む。なんて愚かな考えだ。楽して死ぬ方法など自分には無いというのに。









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