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終わらない世界の中で
05





「帰った!?」

「ああ。早退するってよ」

「そ、そうですか…」

今日も一日授業がやっと終わり帰れる!と思って蓮を誘おうと思ったら早退か…。無理もないよな。あんなに沢山殴られてたんだ、制服で見えない体は痣がある筈。もっと早く蓮を信じてあげれば良かった。

「今日は一人で帰るか…」

山本は最近部活が忙しく帰れない。なんだか試合が近いとか。この時期の部活はどこも忙しい。獄寺君は…「すみません!十代目今日は用事があるので先帰ります」って忙しそうに帰ってしまった。
大丈夫かな、蓮…頭の中はいつも蓮の事ばかり。授業中だって蓮の事が心配でずっと考えていた。俺の隣りに席にいる筈の蓮がいないから。だから放課後会える!とか思ったんだけど結局会えなかった…。でも明日も会えるからいいか。なのに胸騒ぎがする。本当にこのままでいいのか不安が過ぎる。






アパートへ帰ると時刻は午前三時を回っていた。

『…最悪』

悪態を吐きながら上着をソファへと投げ、ベッドに倒れこんだ。今日の仕事はもっと早く終わる筈だったのに予想以上に長引いてしまった。

『(あんま寝れないじゃん…)』

そんな難しい任務じゃなかったんだ。いつも通りの殺し。ただ、躊躇してしまった。人を殺す事に。
何の為に俺は人を殺すのか。別に金が欲しいわけじゃない。現に金は使わないので貯まる一方。殺した正確な数なんて覚えてない。所詮私には過ぎ去った過去の話だ。一々過去に囚われてはならない。
ただ……。俺にはこうするしかないんだ、人を殺す事でしか生きる意味を見出だせないダメな人間だから…。

『(汗でベトベト…)』

ベトベトなのは汗のせいだけではない。相手の返り血も浴びたから。至近距離で放った弾は命中したものの血が噴き出した。
死角から相手を撃てばいいのに俺は何故か正面に立ち撃ってしまった。そのせいで姿がバレてしまったが殺して口封じをすればいい。中々撃つ決心がつかずじりじりと相手を壁まで追いつめ、一発で殺すつもりだったのに急所を外してしまい二発。本当今の俺はどうかしてる。一瞬人を殺す事にためらった。今更後悔なんてないのに。どこかに迷いがあったんだ。
任務の時銃を使う様になったのは一瞬で簡単に殺せるから。ナイフは刺した時のあの感触が嫌で嫌で堪らない。だってそうだろ?肉を斬り裂く感触が直に掌へ伝わるんだ。骨を断ち切る音が伝わり、相手の絶叫が木霊する。…考えただけでも悲鳴や感触を思い出す。
殺すのが楽しいと思ってる奴はナイフを使うが俺は嫌だ。楽しいと、殺しが娯楽になってしまうという奴等の仲間入りはしたくない。

だけど一人になると考えてしまう…次はどんな風に殺そうか…手足の爪を一枚一枚剥し断末魔の叫びを聞きながら苦しむ姿を想像してしまう自分がいる。腹腸を抜き出しグチャグチャになるまで刺し続ける。

(もう今のままじゃ満たされない)

そんな事を考えてしまう自分が怖いんだ。自分自身が。

『取り敢えずシャワー…』

動くのも怠くて、でもシャワーを浴びたくてベッドから体を起こした。
洗面所へ向かい赤髪の鬘を取ると金髪がバサッと肩にかかった。
こんなに長かったっけ?いつの間に伸びたんだろう…。服を脱ぐと身体中には痛々しい痣が無数出来ていた。顔の腫れもまだひいてない。いいや、早く体についた汚れを洗い流したい。

お風呂から上がって着替えるとそのままソファに体を倒し重くなった瞼を綴じた。





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あきゅろす。
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