終わらない世界の中で
04
ガラガラ
「先生いますかー…」
「おう。俺は男なんて診ねーぞ」
Dr.シャマルだー!
視界には椅子の背も垂れに寄り掛かり足を組む奴の姿が入った。
なんでここにシャマルなんかが、と思ったがすぐ思い出した。そっかすっかり忘れてた。保健の先生がシャマルだって。
「ほら行った行った」
「ちょっと待って、俺は兎も角蓮は怪我してるんだ!」
『いいって。俺もこんなオッさんに診てもらうのなんか嫌だし』
まぁ確かにオジさんに診てもらうのは俺も嫌だけど…って、
「蓮は怪我してるだろ!手当てしてもらわないと、」
「誰が二人出てけっつったよ」
「え?」
『は?』
「出てくのはお前だ」
そう言って指差したのは何度見直しても間違なく俺。俺だけを捕らえていた。
「俺ーーーっ!!?」
「お前怪我してねぇだろ」
「確かにしてないけど…」
なんだか納得いかない。
『ツナ先教室戻ってて』
「蓮…でも、」
元はといえば俺がもっと早く蓮を庇わなかったのが悪い。早く庇っていればこんな怪我しなくて済んだ。それなのに先に行くなんて…。
「いいから早く行った行った」
迷ってるツナにシャマルは無理矢理保健室から追い出しドアを閉めた。しかも鍵まで。鍵掛ける必要全く無いと思うんだけど、なんか嫌な予感。早く此所から出たい。
渋々彼が教室へ戻ったの確認すると口を開いた。
『……男は診ないんじゃなかった?』
「それはそうだが、お前は男じゃない」
『……』
「黙ってるってことは図星だろ?俺には一目見れば分かる。誰も気づいてないみたいだが細い身体に声だって他の連中に比べて高い。胸はサラシかなんか巻いてるみたいだが…」
『ストップ』
うわー…当たってる。声高いの気にしてたのに。周りの奴と比べたら身長も低い。ツナよりも…同じくらいかな…。
シャマルとは初対面の筈だ。一瞬見ただけでこうも分かるもんか?いや、きっと相手はシャマルだからだ。今までバレた事なんてなかったのに。
「なんでお前みたいに可愛い子が男装なんかしてんだよ。勿体ねぇ…それに頬腫れてるじゃねぇか」
『関係無いだろ。早く手当てしろよ』
「わーってるって。生意気なガキだな…動くなよ」
頬には大きな湿布が貼られ腕に器用にガーゼを巻いていく。こう見えても医者だから当たり前か…。でもなんで中学校で保健の先生やってんだか。国から追放されたんだっけ。あー湿布がスースーして気持ち良いけど少し目に染みる。腕怪我したの気付かなかったが多分机に倒れこんだ時ついたんだろう。
あっという間に手当ては終わった。
『どうも』
「おう。お礼はデート一回でいいぜ」
『俺と行って楽しいのかよ』
「勿論変装してない姿なら」
『ロリコン』
喋り出そうとするのを遮り立った。
「またいつでも来いよ」
『怪我したらな』
「…女なんだから無茶すんなよ」
『無茶なんかしてない』
「どうだかな…。あとサラシばっか巻いてないで下着もちゃんと着けろよ。大きくなんねぇぞ」
『セクハラ』
保健室を出た。
女だから…いつから男と女に差が生まれたんだろう。
シャマルは俺の正体を知ってるのか?よく分らない。いいふらす気はないみたいだが…信用ならない。気をつけないと。
保健室はサボりたい時いいが先生がシャマルとなると行きたくない。いや、もう保健室に行く気はない。
今から教室に戻るのはツナに悪いが気が乗らない。戻る気も更々ない。
そういえば日本に来て一件依頼が入ってた。それを片付けるか。いつもは眼の効かない暗い夜にやるのだがたまに昼間ってのもいいだろう。
「(10年後…あいつの姿が楽しみだ)」
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