終わらない世界の中で
03
「止めろよ」
『やまも…と…?』
さっきまで窓際に立ち傍観してたのに今は俺の前に庇うよう出る。
「山本何言ってんだよ!こいつは…」
「俺は実際の現場見てねーからよく分かんねぇけど蓮はそんな事する奴じゃねぇよ」
山本が俺を庇ってる?なんで…庇ったって何の利益もないじゃないか。逆に自分が痛い立場になるのは分かってる筈だ。
「奏美はこいつのせいで休んだんだぜ!?」
ああ、道理であの声が聞こえないと思ったら今日は来てなかったのか。
「奏美が嘘ついてるってのかよ!」
「そーだ!奏美はあんなに泣いてたのに!!」
このクラスの奴等完璧彼女の下僕にされてる。こんなに必死になって彼女を庇うなんて。
「嘘だとは言ってねーけど寄ってたかって蓮をいじめるのはどうかと思うけどな。…蓮、立てるか?」
そっと差し出された手に戸惑いながらも山本の手を借り立ち上がったがフラつき山本に凭れかかってしまった。
「っと。大丈夫か?」
だが体制を崩さず支えてくれた。
『…ありがとう』
「昨日は殴って悪かったな…」
『いや…いい。逆の立場だったら俺もそうしてた』
…多分。
「山本…お前そんな奴なんかに…!!」
「おい!テメーらいつまでも喚いてんじゃねーぞ!!」
あんなに俺を嫌ってた獄寺の怒号が飛ぶ。
「そっそうだよ!何かの間違いかもしれないし…」
ツナまでもが二人に加わり前に出る。
「……山本達がそう言うなら…」
「そうだよな。まさか一条がやるわけないよな」
先程の勢いはなくなり大人しくなった。凄い…山本と獄寺とツナ。この三人に助けられた。さすがというべきか。
「蓮っ!!」
『ツナ…どうし…』
「どうしたじゃないよ!口から血出てる!腕も切れて…早く保健室行こう!」
『えっ?ちょっツナ…!?』
有無を言わせず半端強制的に腕を掴まれ保健室へと向かった。
ツナが無口でどんどん足速に廊下を歩いて行く。先程から声をかけても俺を見てくれない。俺の声は聞こえているのだろうか?
『おいっ…ツナ!』
「え?」
何回呼んだんだろう。やっと振り返り俺の顔を見てくれた。
『手…痛いんだけど』
「あっご、ごめん…」
視線を下に向けると今気づいたのか慌ててパッと手を放す。
『いいよ別に』
「こんなに強く握ってたなんて…本当ごめん…」
もう一度謝った。表情が暗くなる。
ツナに掴まれてたとこが赤くなっていた。結構強く掴んでたんだ。少し痛かった。
『いいって、これくらい』
殴られた痛みよりはかなりマシ。
「蓮…俺っ…!…蓮の事…あの時助けに行かなくて…ごめん…」
目頭が熱くなってきた。段々鼻声になる。ヤバい泣きそう。
『ツナ…』
「よく考えれば蓮があんな事やるわけないのに…信じなくて…ッ」
気持ちが高ぶり感情的に溢れ出す涙が止まらない。どうしよう、廊下で泣くなんて。こんな格好悪い姿見て蓮も呆れてるかもしれない。
「おれ、本当は謝りたかったんだ…あの時だって…今日だって…!」
『ツナ、もう』
「謝って許してもらうなんて虫の良すぎる話しだよな…。分かってる…けど!」
『もういいから。ツナの気持ちはよく分かった』
「…蓮」
『だから泣くな。その気持ちを知れただけで俺は嬉しいから。…今度は俺を信じてくれるよな?』
なんでこんな俺を簡単に許してくれる?蓮と同じ目に遇うのが嫌で…自分が嫌われるのが怖くて一回見捨てたのに。それを考えると止めようとしてた涙がまた流れる。自分がこんなに涙腺緩いなんて。
「蓮…っ」
『わー!だから泣くなって!』
「ごめっ…止まんなくて……蓮を信じる、絶対に信じるから!!」
頬を伝う涙を掌で拭い真直ぐ瞳を見つめた。
『ありがとう。俺もツナを信じるよ』
「本当?」
『本当だって。よし、男と男の約束』
そう言うと拳を前に出した。俺も自分の拳を前に出し蓮の拳に「コツン」と合わせた。
「約束!」
今度は二人共笑顔で。
(甘く悲しい約束を交した。いつかきっと、どこまでも待っていてほしいから)
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