終わらない世界の中で
02
校門を潜り学校に入ると休み時間なのか生徒がチラホラいて軽蔑した目で見られた。中には俺を見てヒソヒソ話しだす奴もいる。きっと話の内容は俺の噂か悪口。
ああ、もう噂は広がってるんだ。俺が奏美を襲ったと。
自分の下駄箱に脱いだ靴を入れようと開けた途端ゴミが落ちた。溢れんばかりにゴミが詰められ、汚れていた。それに鼻を突き刺す様な異様な臭い、異臭がする。それを見てクスクス笑い声が聞こえる。絶対そいつ等がやったに違いない。ゴミを分けその中から上靴を取り出すとまだ履いてもない新品な筈なのに無惨にも靴紐は切られ外側や内側も汚れていた。上靴の中にもゴミが詰められてる。
…これじゃ履けない。履きたくない。
『はぁー…』
このくらいは予想してたがまさか本当にやってくるなんて、ベタだ。
小さくため息を吐き職員室へスリッパ借りようとしたが止めた。転校して早々嫌がらせにあってるなんて事先生達に知られたら何かと拙い。動き難くなる。確か…来賓者用のスリッパがある筈だ。それを借りよう。一足ぐらい無断で借りたってバレないだろうし。
休み時間は終わり廊下静まり返る中ペッタペッタとスリッパの足音が響く。クラスは確か…2-Aだっけ。教室を覗くと教師の姿は見えない。それを良い事に生徒達は好き勝手し放題。入るしかない、よな…入ろう。なんだか遅れて入るのって嫌なんだよなぁみんな俺を見るに決まってる。ドアに手を掛け開けた。
ガラガラ
煩かったのが一気に教室は静まり返った。大半が俺を睨んでいる。
「いやーなんで学校来てんの」
「奏美ちゃんにあんな事しといて…」
「どんな神経してんだよ」
聞こえてくるのは俺の悪口。聞こえるようわざと言ってるのか?耳を澄まさなくても入ってくる。聞きたくもないのに。
立ってても仕方ないので何事もなかったかの様に自分の席へと向かう。隣りに座るツナは俺を見向きもしない。
やっぱそうだよな。何期待してんだか。
『………』
鞄を下ろそうと自分の机を見ると黒や赤等のマジックで落書きしてあった。丁寧に彫ったのまである。それは見たものを決して良い気分にはしない、不快な言葉ばかりだった。ご苦労な事だ。そんな労力があるなら勉学に励めば良いものを…何故こうどうでもいい事に時間を費やす?馬鹿か。見ると椅子までに落書きしてある。気にしないでそのまま椅子に座った。
あ、ズボンにインク付いてたらどうしよう。まぁいっか。洗えばいい事だし。机ん中に教科書置いてかないで良かった。置いてたら教科書までグチャグチャにされてた。
男子らはその反応が気に食わなかったらしく早速吹っ掛けてきた。
「お前さー、よく学校に来れるな。どのツラ下げて来たんだよ」
何も無いまま帰れるなんて思ってなかったがこうも早いと先が思いやられる。
「奏美はどんな思いしたと思って…!」
また奏美奏美って、そんなに好きなのか。
『んなの知ったこっちゃねぇ…』
「はっ?」
『聞こえなかったのか?俺は知らねぇつったんだよ。アイツの事なんか知るか』
つい喧嘩を買ってしまった。売られた喧嘩は買う主義なんだよな…。極力無駄な争いは避けたいのに何やってんだろう…なんかみんなあの女に従ってると思うとムカついてならない。
「てめぇ…!!」
挑発に乗ってきた。怒りに満ちた顔、良い顔だ。少しだが殺気立つ。見ていて虫酸が走る。殴りかかってきそうだな…。
ドカッ
そう呑気に考えてたら本当に殴ってきた。その勢いで後ろに倒れかる。机の角が背中に当たり痛かった。勿論頬も。山本に殴られたばかりだというのに。歯は折れてない、だが口の中を思いっきり噛んでしまい口の中は鉄の味が広がる。口から流れた血を手の甲で拭った。
それにはツナも驚いたらしく思わず目があったが直ぐ逸らされ、席を立ち端っこの方へと行ってしまった。
「おぉ!いいぞやれやれー!!」
それに便乗し一人の男子が大声で叫んだ。
普通この時点でクラスの異変に気づき他のクラス等が様子を伺いに来るが生憎B組もC組も授業が移動教室でいない。だからこんな騒いでられるんだ。
何も言わず無言で立ち上がろうとしたら今度は腹を蹴られた。
ドコッ
「おい無視はねーんじゃねぇの?」
『………』
「無視してんじゃねーよ!!」
『…つ…っ…』
サッカーボールを蹴る様にまた腹を蹴られた。痛い…。でもあの実験に比べたらどれほど楽だろうか。それを思い出したらこんなの苦じゃない。幾らだって耐えられる。
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