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愛は僕等を救わない
03


本当ナルトには驚かされる。多重影分身するなんてそんなチャクラどこにあったんだか。
だがこちらが優勢に見えたのも束の間、ついに我愛羅は完全体になってしまった。踏み潰されてしまいそうな、恐らく踏んでも気づかないだろう。其ほど大きい。これがテマリが恐れていた完全体なのか…。こんなものを体に宿していたと思うとゾッとする。
ナルトが煙管を銜えた大きな蛙を口寄せした。この蛙も中々大きい。何か蛙の頭の上で言い合ってるが大丈夫なのか…。どんな戦いをするのかと思えばまるで地震のように地面を揺らし嵐のように激しい水が降り注ぐ。視界に収まりきらないほど大きな戦いを始める彼らに度肝を抜かされた。僕は唖然と見ていた。


守鶴は砂になって消え巨大な蛙は煙を巻いて消えた。サクラを拘束していた砂が崩れ慌てて体を支え寝かせた。
……勝ったのか?

「終わったみたいだな…」

サスケが歩み寄ってくる。まだだ、彼らの所へ行かなくちゃ。サクラを犬に頼み駆け出す。

『行ってくる』

「おい!」

後ろからサスケが追ってくるが直ぐに隣に並ぶ。何も言わず僕に合わせて走ってるんだと思うと少し虚しくなった。

二人はチャクラを全て使いきり動けず地面に倒れていたがナルトが這いつくばり我愛羅に近付く。サスケが構わず駆け寄ろうとしたが服の端を掴みそれを制した。彼は大人しく止まる。

「一人ぼっちの…あの苦しみは半端じゃねーよなぁ…。お前の気持ちは…なんでかなぁ…痛いほど分かるんだってばよ…」

「けど…俺達にはもう大切な人達が出来たんだ…。俺の大切な人達…傷つけさせねェ……。でなけりゃーお前を殺してでも俺はお前を止めるぞ…。そんなことしたら今度はソラに俺が殺されるかもしれないけどな……」

ナルトだから彼の苦しみを理解できる。同じ立場だったからこそ…。

「何で…何でお前は他人の為にここまで…」

「一人ぼっちのあの地獄から救ってくれた…。俺の存在を認めてくれた…大切な皆だから…」

「……」

「もういい、ナルト…」

傍へ行きサスケがサクラの無事を伝えるとナルトは笑った。そして安心したのかそのまま気を失った。

『我愛羅…少しだけ思い出したんだ。君と過ごした日々を』

記憶の中の僕達はいつも笑顔で。

『あの頃の僕は幸せだった』

視線が合うが我愛羅は何も言わなかった。気づいてる筈だ、僕が………。
駆けつけたテマリとカンクロウは僕らほどではないが傷だらけだった。

「もういい…ヤメだ」

カンクロウが我愛羅の腕を首へ回し体を支えテマリと共にその場から消えた。

「ソラ…」

『……僕達も帰ろう。これからが大変だ』

何か言いたそうだったが何を言う訳でもなく静かに頷いた。
きっと木ノ葉は僕らが出て行ってからもっと悲惨な状態だろう。そして火影は…。


あの戦いから二日経った。この二日間はとても忙しく皆街の修復や怪我人の治療等と慌ただしく過ぎていき、戻った時には酷く荒れており血の海と化していた本選会場も大分片付いた。
哀れむかのように今日の天気は生憎の雨。雨は嫌いじゃない。僕はあの丘で雨に濡れながら街を見渡す。今頃アカデミーの屋上で僕が知ってる人達は皆三代目の葬儀に出てるんだろうな。火影様には沢山お世話になったし行くのが当たり前なのだが行く気になれない。何故なら知っていたから。大蛇丸との戦いで命を落としたと聞いてあの日見た残像は未来の出来事だったんだと思い知る。
どうして僕に見えるのか分からない。見えてもどうすることも出来ないのに。





それから暫くして本選に来ていた風影は既に死んでおり風影は大蛇丸、或いはカブト辺りが風影を演じていたという事実。全ての事件の発端が首謀者、大蛇丸の手によるものだということを砂隠れは直ぐ様公のものにした。更に木ノ葉に対し全面的な降伏を宣言し木ノ葉もこれを受諾する。木ノ葉側としても戦禍の爪痕、そして国力の復旧を急務と考えたんだろう。
里のことを考えれば一番の方法だが蟠りが残る。互いに大きなモノを失った。

次の五代目火影様は誰に決まるのやら。





1125やっとup。また少し書き直す予定(;'A`)



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