愛は僕等を救わない
01
その姿を目にした時、動けなかった。まるで金縛りにあったように体が硬直し目を逸らせなかった。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い。限りない恐怖が僕を支配する。
すぐにでもその場から逃げ出したかった。
だが足が竦んで動かない。怖さのあまり体が震えてる、なんて情けないんだ。仲間を置いて逃げては絶対に駄目、僕らの任務はサスケを止めること。彼と一緒に戦わず逃げれればいい。だから早くサスケを連れて…。
『……』
僕は、彼を知っている?
否、この姿を見たのは初めてだ。本当に?何処かであったような、以前から知っているような妙な感覚。目眩がする。
倒れているサスケを見てナルトは我愛羅を思いっきり蹴り飛ばしその隙にサクラはサスケの姿を見るや否や直ぐ様助けに駆け寄った。首筋から顔へ呪印が広がっており苦しそうだ。
『サクラ!』
大木へ叩きつけられた。幾ら呼んでも返事がない。気を失っている。
助けなきゃ。早く、
「サスケとサクラを頼む!」
『分かった』
頷いたはもののサクラは我愛羅によって押さえつけられている。ここは一旦ナルトに任せサスケの所へ向かう。彼の腕を自身の首へ回し体を支えながら樹の根元へ運び座らせた。僕の力では呪印を抑えるのは不可能だ。だけど傷を癒すことは出来る。但し傷を治すだけで疲労は回復しない。この呪印はとても嫌な感じがする。利用すれば力を発揮し我愛羅の様な強者相手に立ち向かえるがそれと同時に身体は呪印に蝕まれいつか必ず後悔する時が来る。選択はサスケが決めることであって口出しはしない。
「…悪い」
『悪いと思ってるなら無茶はしないことだ』
「そうだな…」
妙に大人しい。僕らが来る前に何かあったのだろうか。
ズサアッと地面にナルトの体が投げ出されるのを見え、サスケに一言残し駆け付ける。
『やめろ!ナルトが敵う相手じゃない!』
「うっせー!やってみなきゃ分かんねーだろ!!」
敵わないと分かっていて立ち向かうナルトは滑稽に見えた。そして止めようと思えば止めさせることが出来るのにそれをしないただ見ているだけの僕も愚か者だ。
無駄だよ。生身の人間が一尾に勝てる筈がないんだ。ここは増援を待つ他に…しかし待っている間にもサクラは苦しみ我愛羅の変化は完全なモノと成していく。僕らに出来ることはなんだ?
名前を呼ばれ見向くと少し覇気があるナルトの顔。
「とっておきがあるんだ」
チャクラの消費が激しいからとあまり使わないでいた術があるとのこと。仙人との修行で身に付けた術らしい。
「………」
『………』
良い作戦があるからと言われたのになんだコレは。張り切って印を結んだものの口寄せしたのは掌サイズの気持ち悪い色した蛙だった。しかも少し生意気。とても戦力になりそうにない。嗚呼、ナルトに期待した自分が馬鹿だった。
「俺ってばアレだ!お前ら蛙って奴が大嫌いじゃー!!」
「なんじゃコラー!両生類舐めんじゃねーぞ!!」
早速喧嘩してるし…。突っ込む気にもなれない。
『もういい。僕がやる』
「なっ!お前弱いから無理だってばよ!」
ムカッ
『君よりマシな自信はある』
「無理だって言ってんだろ!」
「喧嘩しとる場合か!!今は奴をどうするか考えろ!」
戦えない癖によく言う。
思ったんだ、犬を囮にして僕らは逃げればいいんじゃないかって。…駄目だ。この犬で10秒ももつまい。秒殺される。
「…恐ろしいこと考えてないだろうな」
『恐ろしいことって?』
「………もういいわい」
言いたいことがあるならハッキリ言えばいいのに。
唸り声を上げメリメリと音を立てながら我愛羅の身体が変化した。右腕だけだったのが左腕までも大きく変化し顔付きも全く変わってしまった。額には「愛」の文字が残るが既にもう彼の面影は無い。
「俺を倒さなければあの女の砂は解けないぞ」
それどころか砂は時が経つ度サクラを締め付け最後には絞め殺すと言う。
だったら手っ取り早く彼女に聞くのが一番だ。
移動しようとするが我愛羅の腕から無数の手裏剣がこっちへ投げ出される。僕は犬を、ナルトは蛙を持ち別れ攻撃を躱したがナルトは蛙を庇い正面に食らってしまった。医療忍術を使う暇すらない。少しだけ間をもってくれ。
『ここなら多分攻撃はこない。暫く動かないで』
「お前はどうするつもりじゃ?」
『彼女…テマリに抑える方法があるか聞いてくる』
「素直に教えてくれるとは限らんぞ」
『その時はその時』
また別の方法を考える。
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