愛は僕等を救わない
06
階段に座っていたが腰を上げゆっくり一段ずつ上っていく。通路には未だ生暖かい空間が広がっていた。そこは酷く血腥い。先程まで生きていたソレは惨い姿で在ったが何も感じない。こうなるのが自分じゃなくて良かった、それだけ。見殺しにしたことについて罪悪感はこれっぽっちもない。誤って肉片を踏んでしまいグチャッと気持ち悪い音と跳ねた血が服に付く。白い服じゃなくて良かった。
いつか僕も躊躇無く人を殺す日が来るのかな。…これ以上居たら血の臭いが全身に付きそうだ、離れよう。
「あ」
先程いた客席に戻ると僕の足音に振り向いたリーが声を上げた。松葉杖を付いたリーとガイ先生も来ていた。
『こんにちは』
「こっこんにちは!」
慌てて彼も挨拶を返す。
『試合、止めるんじゃなかった?』
「俺は何回も止めたんだけどカカシ先生が!」
「ソラも心配する必要はないよ。黙って観てればいい」
『口出しするつもりないから最初からそのつもり』
どうしたら心配ないなんてキッパリ言えるんだろう(別に心配してないが)。自分が修行についたから?教えたのがあのうちはだから?両方かな。
「…血の臭いがするな。ナルトとシカマルからも少ししたが」
『ああ…さっき我愛羅が殺した奴等の血が付いたんだ。まだあると思いますよ、あっちに』
マスクしてるのに分かるなんて犬か。死体は早く処理してくれることを祈るばかりだ。此処に暗部が数人いるからその人達がやってくれるだろう。
試合を観るとサスケのスピードが以前より格段に早くなっていた。それに誰かに似てる動きをしてる…誰だったか思い出せない。
「リー君の動きをイメージさせたんだ」
カカシ先生が教えてくれた。なるほど、通りで見たことある筈だ。ああ、捉えたと思えば我愛羅自身に砂の鎧がついていて中々傷つけることが出来ない。
『何故サスケだったんですか?』
「…俺と似たタイプだったからだ」
だから体術ばかりを鍛えスピードを飛躍的に高めたと。
我愛羅が自ら丸い砂の壁を作り閉じ籠ってしまった。サスケが拳で殴りにいったが硬すぎたのか手からは血が出ている。だがサスケは一旦離れ距離をとり手にチャクラを溜めた。その時に独特の「チッチッチ」と変な音が鳴る。膨大なチャクラの突き手への一点集中、更にはその突きのスピードが相俟って地鳴りにも似たこの音を奏でるという。暗殺用のとっておきの技でカカシ先生唯一のオリジナル技だそうな。技の名前は「千鳥」…つまり雷切。カカシ先生がその術で雷を斬ったという事実に由来する異名なんだと。ガイ先生が説明してくれたが途中から分からなくなって僕は今静かに観戦している。
サスケは我愛羅に向かって走り出し左手を砂の壁へ突いた。左手は砂を突き破り我愛羅の断末魔とも聞き取れる叫びが聞こえた。サスケが腕を抜きそれと同時に砂の壁の中から明らかに人ではない、化物の言葉が適切なのかそのような手らしきものが出てきたがゆっくりと引っ込んでいった。
砂で出来た丸い盾はヒビが入り崩れ肩から血を流す我愛羅が現れた。あまり深くなさそうだが相当チャクラを消費したみたいだ。サスケももう残り僅かだろうし一体どうなるのやら…。
突然上の方から白い羽が沢山舞ってきた。あれ、なんだか瞼が重くなって……もしかしなくともこれは幻術か………。
頭では分かっていたが身体は動かずもう眠い。幻術返しするのも面倒だ。
そのまま意識を手放し床へ倒れた。
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