愛は僕等を救わない
05
最後は意外とあっさり終わった。
終始隣でナルトが煩かったが簡単に要約すると、テマリを影で捕まえたがチャクラ不足の理由で長く捕まえられなくシカマルが棄権した。
「なんでギブアップなんかすんだってばよ彼奴!何か腹立つ!ビシッと説教してやる!!」
確かに負けたって残念そうな悔しそうな顔全くしてないもんな。
『いってら』
「ソラも行くってばよ!」
『何処に…っ』
ちょっ、嘘だろ!
体力をかなり消耗した筈なのに強い力で腕を掴み柵を飛び越え試合場へ先程のシカマル同様落下した。ナルトはちゃんと両足で着地したが突然のことで離せとも言えず僕は受け身を取れないまま物凄い音を立て顔面から着地。
「バカ!!」
「うるせー超バカ!…てかソラ大丈夫か?」
「あ」
何だその反応、今まで忘れてた的な。的なじゃなくて忘れてたんだろうな…腕掴んだままなのに。顔痛い特に鼻と歯。鼻曲がってないかな、そこまで高くないけど…鼻血は出ていなかった。口内が少し血の味がするが。
「ソラ涙目になってるってばよ」
『……ナルト死ね』
「ごごごごめんってば!!ワザとじゃないんだ!」
誰のせいだと思って…ワザとだったら相当僕に怨みがあるんだろうな。うぇ…口の中に砂入っててジャリジャリする。
「いやー、遅れてすみません…」
突然の声と沢山の木の葉が舞いその中に現れたのは今か今かと待ち続けていた人物だった。遅れて来た為カカシ先生は失格になっていないか心配だったみたいだがサスケはそんなの気にもせず堂々たる登場で観客を釘付けにした。これでサスケ対我愛羅戦が見れると、途端に沸き上がる客席。…僕達も早く上に戻ろう。そうしたらカカシ先生に名前を呼ばれた。
「なんでソラ顔赤いの?それに涙目…。もしかしてそんなにサスケに会いたかったのか…」
『違います。誤解を招くような言い方は止めてください』
否、会いたくなかった訳でもないけども。かと言って会いたかったと言うのは少し躊躇われる。一応僕にも羞恥心はあるんだ。カカシ先生に変化は見られないがサスケは…髪が少し伸びたか。一ヶ月会わなかっただけなのに成長したのが窺える。見ていたら目が合った。外見は少し変わってるがいつものサスケだ。
『頑張って』
「あぁ」
つまんない会話。
「上がる時ぐらいゆっくり階段で行くぜ」
『賛成』
「突き落としたのまだ根に持ってんのかぁ?」
もうコイツ時効だと思ってる。どんな図太い神経してるんだ。
「おい!急げってばよ!」
「人生慌てたってろくなことねーぞ」
駆け足で階段を上がるナルトはまだまだ若くおじさんみたいなことを言うシカマルは老けてるなと思う。
「俺は早くサスケの試合が見たいんだってば!ソラも…」
『ちょっと待て』
前を歩くナルトの裾を引っ張り引き止めた。不満そうなナルトに一言『黙れ』と囁く。静かにしろと言って聞く奴じゃない。何故、と疑問をぶつけるに決まってる。
「……どした?」
後ろを歩いていたシカマルが隣に来て問いかけた。前に視線を向けると我愛羅の姿がある。とそこにあと二人額宛(どこの里か忘れた)をした男性が我愛羅に話し掛けていた。声は聞き取れず我愛羅は僕らに背を向けている為表情は分からないが大方勘に障ることを言ったんだろう。瓢箪の蓋は外れていて砂が男性二人を囲むように空を舞う。そして不快な音と血を撒き散らして潰れた。何事もなかったかのようにその中を我愛羅は歩き僕らの間を通り過ぎて行った。気が抜け二人は階段に座り込んだ。
先に口を開いたのはシカマルだった。
「…多分前の二人がいなかったら…俺達が殺されてたな」
通り過ぎた時少しだけ、笑ってる気がした。
「あんな躊躇無く人を殺す奴初めて見た…サスケでもヤバイぞ…こりゃ…」
サスケには当たり前だが人を殺したことがない。この試合、殺す気で戦うか倒す気で戦うかで大分違う筈だ。
「彼奴と病院で会った時の事覚えてっか?」
何それ初耳。口出ししないで聞いていたらシカマルが教えてくれた。我愛羅がリーを殺しに来たことを。その時お前達は必ず俺が殺すとかなんとか言われたらしい。だがそうしなかったのは物足りないから。
自分の為だけに戦い、自分だけを愛して生きる。他人は全てそれを感じさせてくれる為に存在していると思えばこれほど素晴らしい世界はない。
今、我愛羅を感じさせることが出来るのはサスケだけ…。
『歪んでる』
我愛羅は砂の化身、守鶴と呼ばれ茶釜の中に封印されていた砂隠れの老僧の生き霊を取り憑かせこの世に生まれ落ち幼い頃からその能力に恐れをなした父が暗殺人を雇い常に命をとろうとしていたらしい。それを聞けば仕方ないのか、と思ってしまう。
「この試合を止める!!」
カカシ先生の所へ行くと走っていってしまった。
「俺達も行こうぜ」
『先に行って。走りたくない』
「お前なぁ…」
『早く行かないとナルトに追いつかないよ』
「…後からちゃんと来いよ」
小さく頷いた。
僕は走るシカマルの後ろ姿を見えなくなるまでの数秒見つめた。
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