愛は僕等を救わない
04
何やら会場が騒がしい。「早く次の試合始めろ」とか「いつまで待たせるんだ」等怒号ばかり飛び交う。試合の順番が分からないんだがこれって。
『次の出番はサスケ?』
ナルトが勢いよく頷いた。
当人はまだ来ない。遅刻することで周りにどれほど迷惑が掛かっているのか理解してるのだろうか。遅れてるのはきっとカカシ先生のせい。
「皆様!次の試合の受験者が現在ここに到着しておりません。よって…この試合は後回しにし、次の試合を先に始めていくことにしました!」
優遇されるんだ。其ほどお偉いさんや観客は皆サスケと我愛羅の試合を楽しみにしてる。
「俺の試合一試合分近づいたってことかよ!」
『早く終わらせた方が楽じゃん』
「俺は嫌なんだよ!それにサスケが来るまでの時間稼ぎなんて」
シカマルと被り審判は次の対戦相手を告げた。
「では次の組み合わせ、カンクロウと油女シノ。下へ!」
次シノだったのか。よく直前まで表情を崩さずに居られるな。どっち勝つんだろう…やっぱカンクロウかなぁと思っていたら少しの間の後、カンクロウが「棄権する」と言った。これではシノの不戦勝だ。こんなのアリ?
『棄権だって、笑える』
「お前の顔無表情だぜ」
『…悠長にしていていいの?女の人戦う気満々だぞ』
「は」
視線を下へ向ければテマリ…と言ったか、大きな扇子に乗り試合場へ降り立った。
「マジかよ…有り得ねぇ」
ずっと後だと思ってた自分の試合がまさかの二試合目になるなんて誰も予想出来ないよな。
『負けんなよ』
「おー。勝てとは言わないんだな」
『最初から期待してないからね』
「てめぇ…」
『冗談だっての、応援してるから』
「よっしゃー!シカマル頑張れってばよォ!!」
ナルトが思いっきりシカマルを押した為、柵を越え前のめりになって頭から落下した。ドサッと音がしたが下を見れない…痛そう。
試合開始の合図を待たずテマリが攻撃を仕掛けたがそれを難なく躱す。簡単に負けるつもりはないみたいだ。扇子一振りで大きな風が吹き砂埃が舞う。シカマルはというと木の下へ移動していた。
急に対戦相手が変わったんだ、対策も何もないだろうし…どうすんだか。
「今のシカマルスッゴいアホ面だってば」
『…ああ。本当だ』
のんびり空なんか眺めてる。心の準備なしにいきなりナルトに突き落とされたんだもんね、同情するよ。
目が合った気がした。試合中だからこっちを見てる筈ないが……否、見てる…よな?叫ぶのは好きじゃない。喉が痛くなるから。ならばと思い『頑張れ』、口パクで言ったが伝わったかな。距離があるんだ、見ていたとしても何を言ってるか分からないだろうな。
そういえば予選でのこと謝ってない。だがもう今更だしいいか。
『修行さ、誰についてもらってたの?』
「エロ仙人だってばよ」
『エロ…?』
「おう。めっちゃスケベで変態なんだってば」
『………』
首を傾げた。誰だよ。仙人と言うと俗界を離れて山中に住み、不老不死の術を修めて変幻自在の神通力を操るという道教で理想とされた人間だ。だがエロって。
『でも倒れて入院するまで修行したんだから相当厳しいんだね、その人』
「まあな。けどおかげで蛙口寄せ出来るようになったってば!」
果たして蛙は強いのだろうか。笹身の味がすると聞くが食べる気には到底なれない。なんだろう…見た目が気に入らない。
「今馬鹿にしただろ!」
『いや全然』
「馬鹿にしてる顔してたってばよ!」
『そういう風に見えるってことは少なくとも君がそう感じてるということだ』
「うぅ…!今度でっけぇ蛙を口寄せで見せてやるってばよ!」
『楽しみにしてる』
大きいのは少し嫌だが。希望としては手乗りサイズがいい。
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