愛は僕等を救わない
03
「久しぶりだな」
『君とはね。シカマルとは昨日会った』
丸いサングラスと口元まである衿のせいで表情が読み取れない。いつも無表情で不気味だ(人のこと言えないが自分がここまで愛想ないとは思わない)。
「本選に出場しないそうだが」
『知ってたんだ』
シカマルが言ったそうだ。開会式に出なかったんだから気になるのは当たり前だよな。
「何故出ない?」
『まだ本調子じゃないんだよ』
「……」
黙るなよ…もしや疑ってるのか。本当よく分かんない奴。
『んでシカマルは誰と当たんの』
「彼奴」
視線を追うと砂の忍の三人が居た。え、我愛羅?いやいやその相手はサスケだ。ならカンクロウかテマリなのか?シカマルには悪いが…負けそ。
「女の方だよ」
また気の強い人に…二回連続異性か、哀れ。何気コイツはプライドが高い。男尊女卑という訳ではなく負けたくはないだろうがただ単に女故に戦いたくないんだろう。
『シノは誰と?』
「カンクロウだ」
へぇ。…って全身真っ黒であの鴉を使う奴じゃん。慌てた様子はないが果たして勝算はあるのか。
策に凭れ掛かり試合をぼんやりと見つめる。
「サスケはどうした」
『知らない。カカシ先生と修行してんじゃないの』
予選以来だから一ヶ月姿を見てない。カカシ先生が直接指導するんだから相当強くなってるんだろうな。
「んなことは知ってんだよ。彼奴ちゃんと此処に来んのか?」
『どうだろう、カカシ先生任務の時よく遅れて来てたから今回も間に合わなくて失格になるかもね』
「他人事だな…」
『だってそうじゃん』
同じ班だった、ただそれだけの関係。ナルトだってそうだ、だから勝つか負けるか物凄くどうでもいい。正直ネジが相手で勝つ気がしない。今のナルトは既にチャクラを使いきっている様子で形勢は変わらず逆転を狙える場面もない。でも彼奴諦め悪いからなぁ…。
『どっち勝つと思う?』
「ネジじゃねーの」
やっぱそうだよな。聞くまでもない。
ネジが額に付けていた木の葉の額宛を取った。そこには呪印と呼ばれる印が刻まれており、死ぬまで決して消えないという。分家として生まれたことでネジの運命は決まっていたのだ。「運命は決して変えられない」全くその通りだと思う。抗おうとも思わない。僕はただ時に身を委ねるだけ。
だが予想を裏切りナルトが勝った。あのネジに。点穴を突かれチャクラは出せない筈なのに夥しい程のチャクラを出して。恐らくそれが彼の中に封印されている九尾の力なのだろう。
会場は拍手やナルトに対する誉め等の声が鳴り止まない。調子に乗り投げキッスしてるキモ。
「つーか多分俺彼奴に勝てねーマジヤッベーなんかへこむっ!」
んじゃ辞めれば、と言ったらそれもそれで男として嫌そうだから言わないでおこう。結果、僕には『頑張って』としか言えない。
『あ、戻ってきた』
傷だらけのナルトが笑顔で此方に向かってくる。
『お疲れ』
「ソラ!観に来てたんだな」
『だって気になるし』
同じ班から二人も予選に
出場するんだ、気にならない訳がない。特にナルト。先程と言ってることが違うが気にしない。
「怪我はもう治ったのか?」
『うん』
「…目は?」
右目には未だ包帯が巻かれたまま。心配そうに見つめる。
『治りが遅いみたいで付けてる。もうじき取れるよ』
「そっか!」
自分が怪我してる訳じゃないのに喜んで変な奴。
「コイツ本選に出ないんだぜ」
「なんでだよ!!」
うわあああめんどくさっ。説明すんのも怠い。そんな僕の気持ちを察してかシノが先程僕が言った台詞をそのまま「本調子じゃないそうだ」と言った。ナルトには「なんだそれ。勿体ねー」と言われたがその話をそれ以上するつもりは無いので無視。
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