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愛は僕等を救わない
03


練るチャクラが足りなかったせいか直撃したものの相手にさほど痛手を与えられなかった。それに息切れも激しい。慣れない術はするもんじゃないな。

『早く立てよ。これからだろ』

まだ終わらせない。棄権もさせない。それを聞いてか体を起こし不気味に笑った。眼鏡に罅が入っているせいで上手く表情が読み取れないがきっと嬉しいんだろう。目当てのモノが見れて。


「…やはり君は」

『………』

好奇に満ちた表情、何を期待してる?

『この眼が欲しいんだろう?だけどそう簡単にはやらないよ』

利用なんてされるものか。
一瞬で相手に近付きクナイを持ち腹に深く刺した。耳元で聞こえる苦しそうな声にニヤリと口角を上げ刺さったままのクナイを捻った。

『痛い?』

苦しみに顔を歪め腹を押さえる彼に問いかけた。どこまでが演技なのか分からない。避けようと思えば避けられた筈だ。

「君は何も分かってない…。いずれ此方側に来ることになるんだ」

『そんなの自分で決める』

クナイを抜き一旦離れ強く握り締め自分の顔に向ける。

「何をっ!」

目の前の彼が声を荒げた。
グチャッと気持ち悪い嫌な音が聞こえる。自分で刺したんだ、右目を。クナイを抜くと突き刺した右目の眼球は潰れ血が頬を伝い流れる。

『不思議だ…今はとても気分がいい』

「気が狂れたか…っ」

『僕は至って正常だ。其よりもそろそろ勝敗をつけなくちゃ』

二人の会話が聞き取れない。ソラと呼んでいいのかその人物の瞳は妖しく光った。早く止めなければ、俺が、
なのに身体は硬直して動かない。ソラが怖い?そんな馬鹿なこと思うなんて自身が情けなくて。

『雷遁、偽暗』

手元から高速で何かが飛んだ。非常に眩しい閃光を放ち一瞬目を瞑った頃にはカブトはいなかった。ソラが見つめる先を見ると崩れた壁に破壊された瓦礫が散乱していた。恐らくその瓦礫の下にいるのだろう。

「戦闘不能で…」

『まだ息があるのか…図太い奴だ』

審判が終止しようとするがソラは瓦礫の元へ歩き出す。息の根を止める為に。

「やめて!ソラちゃん!!」

「ヒナタ!」

紅の制止の言葉も聞かずヒナタが飛び出した。

振り返ったソラはヒナタに目を向けるとクナイを握り攻撃しようとしたが寸でのとこでカカシが止めに入りソラの手首を掴み床へ押さえつけた。手元からクナイが音を立てて落ちた。

元の瞳の色に戻り呻き声のような声が聞こえカカシが「悪かった」と手を差し出したがそれを掴まず覚束ない足取りで立ち上がった。現状に目をやり酷く驚愕し膝をつき咳き込みながら血を吐き出す。やっと硬直した身体が解け駆け寄り触れようとした。


「ソラ!大丈夫か!」

『…っ触るな!!』

手を振り払われた時、悲しくなった。彼奴から初めての拒絶だった。

『ごめん…』

我に返り直ぐ様謝るが目を合わせずに伏せたまま。
ヒナタが引き止めたが救護班に急かされソラは担架に乗せられ奥へと運ばれた。大量の血の跡を残して。

その後の試合はどうも頭に入らずただただぼんやり観戦した。









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