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愛は僕等を救わない
03

カカシ先生は何を頼む訳でもなく僕の顔をジッと見つめる。…なんだか気まずい。注文しないのか聞けば好きに頼んでいいとのこと。お言葉に甘えて餡蜜を頼んだ。待っている間出されたお茶を啜る。
それにしてもマスクの下が気になってしょうがない。食事中は流石に取るだろうが取ったところを見たことがない。出されたお茶にも手をつけようとしないし…今日今ここで取ってくれないのかな。

「(似ている…)」

『あの…僕の顔に何かついてます?』

「いや、何もついてないよ」

『ならいいですけど…』

「どうかした?」

どうかしたって貴方が僕の顔ずっと見てるせいじゃないか。

『…自意識過剰かもしれませんが初めて会った時も僕のこと見てましたよね。今も』

「ああ…ごめんごめん。似てるなと思ってさ」

『誰に?』

「聞きたい?」

『はい』

「素直だな…」

『悪いですか』

「悪くないけどさ。俺素直な子は好きだよ」

カカシ先生に好かれてもどうってことないが良かったです、なんて思ってもないこと言ったら苦笑された。何でもないような無表情で言うから面白いのだとか。普通にしてる顔が面白いと言われたらどんな顔すればいいのやら。
目の前に運ばれた餡蜜をいただきます、と手を合わせ一口掬い口へ運ぶ。うん、冷たくて甘い。
話しは逸れたが結局誰に似てるのかって、それは。

「忍だよ」

珍しくはない。この世に自分と似てる人間は三人いると聞くしその人もその一人だったわけで、少しだけ興味が湧いた。こんな近くにいるとは思ってなかったけど僕に似てるってどういう人なんだろう。

『どんな方なんですか?』

「気になる?」

『自分に似てる人と言われて気にならない人はいないと思います』

「まぁそうだな。そいつは俺の後輩で男だったんだ。ソラよりも愛想よくて何に対しても意欲的で性格は正反対だな」

『………』

聞かなきゃ良かった。遠回しにこれ僕のこと貶してないか。

『まるで似てないじゃないですか』

「まぁ聞けって。そいつとソラの雰囲気が似てるんだ。髪や目の色もあいつの子供の頃みたいで初めて見た時は驚いたよ」

でもその人は結婚してなかったし恋人もいないし況してや子供なんているわけもなく吃驚したらしい。

『その人は今何を?』

「死んだよ」

『え…』

「殉職したんだ」

カカシ先生はどれ程人の死を見てきたんだろう。忍として生きると決めた以上過去に囚われてはいけないが感情を押し殺すのは機械でない限り不可能。

「まだ若くて周りに期待されてたんだが…本当に残念だったよ。今は平和だがこんな世の中だもんな、いつ戦争に駆り出され死んでも可笑しくない」

忍になるとはそういうこと。里の為に命を懸け命を落とす。自国の為に死ねたなら本望だと思う。ただ僕には忠誠心は皆無だが。

「なんだかしんみりした話になっちゃったね」

『聞いたのは僕ですし普段聞けないような話を聞けたので』

面白かったです、は違うな。楽しかったも違う。いっか、と自己解決し最後の一口を食べ餡蜜を食べ終えた。

「一つ質問いい?」

『なんです?』

「前に夢のせいで眠れないと言ってたがその内容を教えてくれないか」

『ああ…』

いつの日だったかナルトにバカにされたことか。

「出来るだけ詳しく、ね」

そんなこと聞いてどうするんだか。話は聞いたし言わない訳にもいかない…いつも気づいたら暗い建物の中にいて辺りは血生臭く少し歩くと別の僕が泣いてる。傍には沢山死体が倒れてて…そこでいつも目が覚める、と簡潔に話した。大分端折ったがこんな胸糞悪い話なるべく思い出したくない。

「…嫌な夢だな」

『変に現実的で気持ち悪くて…あ、餡蜜ご馳走さまでした。美味しかったです』

「いーえ。さて明日の任務も早いしそろそろ出るか」

明日って確か朝五時待ち合わせだっけ…また何時間も待たされるのは嫌だな……。

「気をつけて帰るんだぞ」

『カカシ先生もね』

上忍だから命を狙われてるかもしれないし。また苦笑されたが甘味処を出てすぐ別れた。今日はもうすることないし帰ろう。

帰路へ歩いてくと僕の顔を見て図体の大きい人が声を掛けてきた。今日はよく知り合い、と言っていいのか人に出会う。

「お!…えーと…」

『ソラです』

「そうだそうだソラ!」

『アスマ先生…でしたっけ』

「おう。なんだ知ってんのか」

『いのちゃんから少しだけ聞きました』

逆に僕のことは誰から聞いたんだろう。大方いのちゃんしかいないだろうな。

「任務の帰りか?」

『いえ。カカシ先生と甘味処行ってたんです』

「へぇ…それは珍しいな。彼奴甘いの嫌いなんだよ」

知らなかった。わざわざ付き合ってくれたのか。

「カカシと何話してたんだ?」

『僕に似てる人がいるって話を聞いてました。一目見たかったんですが殉職したって』

「殉職?…あぁ、そうか」

『?』

「なんでもねぇって。確かにそっくりだな。愛想は良くないみたいだが」

最後の一言余計。態度に出てたのか「悪い悪い」と頭をガシガシ撫でられた。撫でられた瞬間脳裏に浮かぶのはアスマ先生の死。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

『ケホッゲホッ』

「お、おい!どうしたんだ!」

手が振れる前に身を引いた。まだ残像が見える。気持ち悪い。

『ごっごめんなさい!』

「俺は別にいいがお前大丈夫なのか?」

『大丈夫です。本当ごめんなさい』

急いでるので、と言いその場から逃げだした。





0702番外編ににしようかと思ったけど一応…うん( ´_ゝ`)



あきゅろす。
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