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愛は僕等を救わない
02

やっとキバと別れ先程購入した花束を手にし街から少し離れた所にある丘ヘ向かった。数十分して漸く着いた丘から街の景色を眺めた。複雑に入り組んだ造形の建物や人が米粒みたく小さくて巨人にでもなった気分だ。
心地好い風が肌を撫でる。髪が肌に当たり少し擽ったい。茎に巻かれた紙を取り、そして花束を放つ。花びらが風に乗り飛んでいくのを暫く眺めようとしていたがある人物によりそれは遮られた。

「あーあ。折角の花が…何やってんの」

振り向くとカカシ先生が立っていた。ポケットに手を突っ込みいつもの気怠そうな目をして。

「奇遇だな」

『ですね。今日非番なんですか?』

「うん、まあね」

非番なのに上忍の服着てる、私服を見られる日は来るのだろうか。

「ソラは何をしてたんだ?」

『えーあー…見ての通り花を散らかしてました』

「いのって子の店で買った花じゃない?あの子知ったら怒りそうだ」

『カカシ先生が言わない限り分かりませんよ』

「それは困ったな」

全く困った様に見えない。
特に用も無いので帰りますとカカシ先生の隣を横切れば引き止められた。「少し俺に付き合ってくれないか」と。

黙って着いていくと周りの木々に囲まれポツンと慰霊碑が一つだけ置かれている場所に到着した。殉職した英雄と呼ばれている忍達の名が刻まれている。どうしてこんな場所に僕を連れて来たんだろう。

「大切な人の名前が刻まれているんだ」

慰霊碑の前にしゃがみ視線を落とした。数歩後ろで見るその姿がどこか悲しそうで、もしかすると大切な人というのは女性だったのかもしれない。「立派な方だったんですね」「命を省みず職務を全うするなんて素敵です」どれも違う、そんなこと微塵も思ってない。
誰とは聞かなかった。その場の言い様のない雰囲気に飲まれ口を噤んだ。誰かが言ってたっけ、イルカ先生の両親も里の為殉職したと。命は永遠ではない。果して自らを犠牲にしてまで護る価値はあるのだろうか。
暫くの沈黙の後出た言葉は慈悲やなんの哀れみも含まれていなかった。

『写輪眼と関係あるんですか?』

「うん。…詳しい話しはソラがもう少し大人になったら話そう」

そんな日は訪れるのだろうか。ずっと大分先のことなんだろうな。

「殉職したんだってなソラの両親も」

『知ってたんですか』

「受け持った生徒のことはある程度調べさせてもらっている。今日本当は墓参りに行く筈じゃなかったの?」

一体どこまで知ってるんだろう。生い立ちから全てを知っているのか。

『……場所知らないんです』

一度も墓参りに行ったことがない。火影様に聞けばいいのだが聞いてない。聞かれてないから火影様も答えない。顔も知らぬ両親の墓参りなど奇妙に感じる。しかし産んでくれた親の墓参りに行かないのは罰が当たりそうだ。行く気にはなれないが。

『だからいつも供えもしない花を買ってるだけで』

「…親の名前は知っているのか?」

そういえば名前も知らない。

「断片的に記憶がないとは聞いていたが…」

火影様かな。うん、火影様しか思い浮かばない。


「さて、立ち話もなんだし甘味処行かない?」

『嫌です』

「えー…なんでよ(即答された…)」

『なんとなく』

「この後用事ないんでしょ。あ、勿論奢るし」

まあその通りなんだけど…言葉に釣られ近くの甘味処に入ってしまった。特に話すこともないからその辺散歩するつもりだったしいいか。








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