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愛は僕等を救わない
05


少し散歩しようかと廊下を歩いてると目が合い此方に気づき前方から歩いて来るのは見覚えのある二つ結びのお団子とその人についてく長髪の君。

「貴女もここに入院してたのね」

『うん。リーのお見舞い?』

「そうなの。でもリーったら動ける状態じゃないのに筋トレしてるっていうじゃない!さっきまで無理して片手で腕立て伏せしてたらしくて途中倒れてさっき行ったら病室で寝てるのよ」

『はあ…』

まだ懲りてなかったのか。あの人意外に堅いから一回言って聞くような人じゃないもんな。

「病院は傷を癒す為の所なのに悪化させてどうすんだか。全く、看護師の言うことも聞かないらしいし…変なとこで頑固なんだから!」

なんというか…いきなりのマシンガントークに吃驚。小さく相槌しか打てなかった。テンテンってこんな人だったっけ。

「ネジもそう思うでしょ?」

「そうだな。馬鹿で彼奴らしい」

「そうよね、馬鹿だから仕方ないわよね。ベッドに縛り付けるしかないのかしら…」

完璧貶してるよねコレ。二人共もしかしなくてもSだ。しかも最後の発言怖いですテンテンさん。

『心配してるんだね』

「当たり前じゃない。リーは休むって言葉を知らないのよきっと。あの桜色の…彼女がいたら止められたかしら。………一気に喋ったら喉乾いちゃった、何か買ってくるわね。ネジもいる?」

「いや、いい」

僕にも聞かれたが断った。

「そう。じゃ少し待ってて」

この病院に自販機あったっけ…まあいいや。無言で後ろ姿を見送った。

『………』

「………」

初対面じゃないが仲良い訳でもない。間がもつ筈もなく沈黙になるのは当たり前で。

『……』

「……」

早く戻ってこないかな。まだ30秒くらいしか経ってないだろうが体感では既に20分以上経ってる。いい加減先に喋ってくれないかなこの人。…無駄だろうから結局僕からになるんだ。

『ヒナタのお兄さん』

「その呼び方はやめろ」

『えっと…ネジ?』

「なんだ」

『……』

なんだと言われても…ただ呼んだだけで用はない、と言える訳もなく思い付いたことをそのまま言った。

『予選勝ったんだってね。おめでと』

それだけなのに驚愕したような怪訝そうな表情をした。

『え…何か変なこと言った?』

「いや、お前からその台詞を言われるとは思ってなくて驚いたんだ」

僕って一体…。

「試合の様子知らないんだったな…」

『まあ…』

五試合目以降は見ていない。だから対戦相手がヒナタだったことしか知らない。

『何かしたの?』

「殺すつもりだった」

『……』

「驚かないんだな」

これでも内心吃驚してる。ただ顔に出ないだけで。宗家のせいで分家が肩身の狭い思いをしてたのは知ってる。恨みや憎しみがあって当然だと思ってる。何事も上手くいく筈ないのだから。それに見舞いに来てくれたヒナタは怪我はなく元気そうだった。
逆にどうしてそう思ったのか聞けば「仲が良いと聞いた」と。

『ヒナタは強いから』

「俺に負けたのにか?」

『そーいう意味じゃないよ』

「よく分からないな」

『そのうち分かるよ』

多分。

「ソラも本選に出るんだろう」

『あー…らしいね』

「嫌なのか」

『嫌って訳じゃ…まだ実感なくて…』

本選が嫌か嫌じゃないかなら嫌だ。ここで嘘吐く意味ないんだけど見栄ということで。


『努力って言葉嫌い』

「(いきなりだな…)何故?」

『努力じゃどうにもならないことだってある。所詮努力したなんて言って自分に酔ってるだけだ』

「リーやガイ先生が聞いたら怒って殴り掛かるか卒倒しそうだな」

『有り得そう。だから君に言った』

「そうか」

『うん。特に意味はないから気にしないで』

「リーが嫌いとかではなく?」

『嫌いじゃないよ。普通』

嫌いになる要素はない。彼ならむしろ好感が持てる。濃いが。

『天才も好きじゃないけどね』

「理由は」

『なんかムカつく』

「馬鹿な理由だな」

『そうだね』

馬鹿な僕から馬鹿故に出る理由。

「俺も馬鹿は好きじゃない」

『嫌いじゃないの?』

「ああ」

『変なの』

「(お前がな)」

馬鹿は厄介だとか鬱陶しいとか思ってそうなのに。

『テンテン遅いね』

「だな」

自販機見つかったかな。心配になってきた。


数分後缶ジュースを片手にテンテンは普通に戻ってきた。








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