愛は僕等を救わない
06
包帯を取り替えにきた看護師に「もう抜け出そうとしないのね」と苦笑され脱走する気はもうないので『治すことに専念します』と言えば「いいことだわ」と今度はにこやかになった。…無駄だと分かったから。結局見つかり引き摺られ病室へ戻ることになるのだから。顔の包帯はまだ取れないようでなんだかむずむずする。そんなに火傷酷かったのかな。
替え終わり中庭へ行くと看護師に注意されようが構わず毎日リーは筋トレしていた。あれから声を掛けられず意味なくただボーッと見つめて1日を過ごしたり過ごさなかったり。彼も僕の存在に気付いているが何も言おうとはしなかった。
今日は空が見たくて屋上へ向かう。途中開いてるのか心配したが鍵など掛かってなく簡単に扉は開いた。穏やかな風が突き抜ける。…何もない、殺風景なつまらない場所。事故防止か自殺防止の為かフェンスは僕の背より遥かに高くの二倍以上はある。まぁ、お天道様拝めればいい。だが生憎雲が多く太陽が隠れたり出たりの繰り返し。なんだかな…心も晴れない。
『何かしたのかな…』
怯えているように見えた。チョウジやヒナタも、心做しかいのちゃんすらも。リーは…僕を嫌っている様子だった。表面上普段通りで露骨に態度には表さないが目を見れば分かる。誰も合わせてくれない、僕の目を見ようとしないんだ。別に悲しくなんかない。最近隣に人がいたせいか少し寂しいだけで。人と関わらなければ一緒にいなければこんな思いせずにすんだのかな。
感傷に浸っていると扉が開いた。出ていこうか暫く居座ってようか悩んでるとその人物は僕の隣まで歩いてきた。ふと顔を見ると知ってる顔だが意外な人物で用もないのに名前を呼んでしまった。
『えっと、我愛羅』
「お前は…ソラと言ったか」
『うん』
今僕の名前呼んで…覚えててくれたんだ。それだけの事なのに凄く嬉しいのは何故だろう。
「腕は」
『あー…試験でね。っていたんだから知ってるか。木ノ葉の技師が義手作ってくれてるみたいなんだけど時間かかりそう。成長期だから丁度新しい義手にしようと思ってたし良いタイミングかも』
笑ってみたが上手く笑えた自信はない。妙に顔が引きつる。なんでこんな気遣ってんだろう…可笑しいな、僕こんなキャラだったっけ気持ち悪い。
「痛く…ないのか」
『痛くないよ』
今はね、全く痛くなんかない。なのに何故君の顔は悲しそうに歪むの。
『どうしてここに?』
砂の者は誰一人怪我をしていなかった筈、なら病院に来た理由は一体なんだろう。
「お前に会いに来た。確かめる為に」
真っ直ぐ見つめる我愛羅の視線に逸らせなく僕も見据える。その目、以前にも見たような…。
『ねぇ、僕達前に会った?』
「……」
『ごめん。唐突すぎたね。君といるとなんでだろう…懐かしいんだ』
懐かしい感じがする、とても不確かで曖昧な感情。
『大切な事忘れてるような…気のせいだよね』
「気のせいじゃない」
ハッキリと言い放った。
「俺はずっとお前に会いたかった」
一瞬見た夢の子供と彼が重なった。そんな筈…ないのに。
「俺を…砂の里に居た時のこと覚えてないか?」
『………ごめん…ここに来る前のことは何も覚えてないんだ』
「…そうか」
物心がついた時既に木ノ葉にいた。その前はどこにいたのか全く思い出せなかったが今なら…。
『いつか…いつか必ず思い出すから!まっ…待っててくれる?』
「…ああ」
心が痛むのは今だけ、そう思えばこの苦しさからも逃れられる気がした。
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