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愛は僕等を救わない
03

コンコン、と扉を叩く音が聞こえると返事をする間もなく扉が開いた。

「あら、起きてるなんて珍しい」

『……いのちゃん』

「何よその微妙な反応。折角来てやったのに」

『久しぶりだなって、』

「ま、アンタはついでだけどね」

一言余計だと思うんだけど。短くなった髪は頭の後ろでお団子に結わえている。

『誰のついで?』

「チョウジ。入院してること知らないっけ?」

『あー知ってる知ってる。聞いた』

そういえばさっき廊下で会ったっけ。試合後の焼き肉食べ過ぎてお腹壊して入院してるとか情けない。

「チョウジは元気そうなのにソラはずっと寝てるんだもの…もう目覚まさないのかと思った」

『んな縁起の悪い…』

「アンタねぇ…今は呑気にしてるけど本当心配したんだからね!」

『あははっ』

「なっ何笑ってんのよ!」

『ごめんって!嬉しくてつい』

「…馬鹿。一昨日もお見舞い行ったのにいないし…サクラとヒナタも心配してたんだから」

一昨日…脱走を試みた時だ。これは流石に言えない、言ったら怒られそう。

『あ、もしかして花やってくれたのって』

「今さら気付いたの?私とヒナタよ」

『ありがとう』

「ちゃんとヒナタにも言うのよ。誰よりも心配してたんだから」

『分かってる』

今度はいつヒナタに会えるだろう。会ったら最初にお礼を言わなくちゃ。サクラは…もう来てくれないのか、同じ班なのになんだか悲しい。

「サクラはサスケ君が病室から消えてショック受けてんのよ」

『へー…え、』

「サスケ君病室にいないんだって。抜け出したみたい」

静かに入院してるのは性に合わない奴だろうとは知ってたがまさか…修行?深手は負ってなかった筈だけど無茶出来る体じゃないことには変わりないのに。
あと、どうして、

「あ、サクラのこと?今サクラが来なくて悲しそうな顔してたから。あんたそんな顔するなんて人間味出てきたじゃない」

『……』

「感情豊かになったって褒めてんのよ!」

容赦なくベシっと肩を叩かれた痛い。

「サスケ君もどこかで修行してるのかしら…」

『そういえばカカシ先生がサスケの修行に付き合ってるって』

「それ本当!?」

予想以上に食いついた彼女にカカシ先生が見舞いに来たことを話した。


『ねぇ本選ってトーナメントなんだよね、誰と当たるのかな』

「あんた何も聞いてないの?」

『何が?』

「本選の相手もう決まってるわよ」

『え、嘘だろ。いつどうやって決めたの?僕の対戦相手は?』

「落ち着きなさい。予選終わってすぐくじ引きで決めたの。ソラの相手は………シカマル」

『……』

開いた口が塞がらないとは正にこのことだ。うわあ…いのちゃんが嘘吐く訳ないし…ああああ。カカシ先生も肝心なとこ言わないんだから困る。

「シカマルとまだ会ってない?」

『うん』

見てないな。今会っても何話せばいいか分かんないし気まずいから来なくていいが。


『…ねぇ』

「何よ」

『試合中の記憶が途中からないんだけどさ、何かあった?』

「………」

一瞬瞳が動揺し揺れた。やっぱ何かあったんだ。

「なんにもないわよ」

『そっか、ならいいんだ』

「どうして?」

『どうやって勝ったのか覚えてないんだ。カカシ先生に押さえつけられたのは覚えてるけどね』

「…そう。無理に思い出すことないんじゃないかしら」

『でも気になる』

それより!と少し声を大きくしいのちゃんは別の話題に切り換えた。僕は話を戻すことなく受け入れる。

「腕はいつ付けるの?」

『当分先。本選に間に合うか怪しいくらい』

目覚めた翌日だか技師が来てそう言った。前付けていた義手があればそれを元に作ればいいから早いんだが…とか愚痴られたが無視。

「…義手だって知らなかった」

『別に隠すつもりはなかったんだ。言う必要がなかっただけで』

「それでも教えてほしかったわ。少なくとも私は」

ふと彼女の言葉に気づかされることが多々ある。

「ソラはいつも一言足りない」

『いのちゃんはいつも一言多いよね』

怒ったいのちゃんは普段通りで安心した。

「ヤバッ。もうこんな時間!私帰る」

『気をつけて』

また来るわね、と急いで病室を出て行き一人になった病室を見渡し溜め息を吐いた。








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