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愛は僕等を救わない
02

『ひーまあー』

最近独り言が多くなった。誰かに聞かれたら恥ずかしいから早く治したいけど自然に出るんだよなぁ…。声に出したとこで現状は変わらないのに。
まだ傷口が塞がってないので安静に、とのことで病院すら自由に動き回れない。入院して十日目が過ぎた。ずっと寝ていれば早く感じるだろうが寝ることが好きだとしても限度がある。僕にとってこの五日は長かった。後の五日は目を覚まさなかった期間。いい加減動きたくて体が疼いてる。

時刻は昼の1時少し過ぎたとこ。
あああ暇だ、暇すぎる。やることないからひたすら寝てたら寝過ぎて頭痛い。一昨日と昨日は脱走に失敗して病室で絶対安静と言われ已む無く一日をベットの上で過ごした(時折看護師が様子を見に来るので脱走出来なかった)。今日は窓からリーが腕立て伏せしてるのが見えたからなら筋トレしようかと(筋トレなら許可してくれるだろうなと)看護師に言えば傷口開くからまだ動くなと…。片腕で筋トレって限られるけどもう色々と仕方ないのでこっそり病室を抜け出した。

「ソラ!」

廊下を歩いてると呼ばれ振り向くとチョウジがいた。

「もう体は平気なの?」

『うん。君はどうしてここに?』

「それがさ、あはは」

言いづらそうに手で頭を掻き笑った。焼き肉食べ過ぎてお腹壊したんだと。…どれだけ食べたんだか。
それから少し他愛のない話をして別れた。普段と変わらない筈なのに終始チョウジが目を合わせてくれなかったのは気のせいじゃないだろう。


「はぁ…はぁ…」

『………』

中庭にて片腕が使えない状態で腕立て伏せを懸命に続けている。そんな彼を僕は傍でジーッと見ていた。

『…どうして頑張るの』

「何がです?」

『全部』

「全部って…」

困った顔した。これは僕の言い方が悪かったな、認める。

『怪我してるんだから治るまで寝てればいいのに。傷口開いて治るの余計遅くなるよ』

「…そうですね。分かってますが…」

『休むのが怠けることじゃない』

「ですが僕が休んでいる間にも彼等は厳しい修行を熟し力をつけています。僕だって早く追い付きたい!じっとしてるのは合わないんです。正直あの試合を見て貴方にも実力の差を見せつけられました。今のままじゃダメなんです、今の僕じゃ…!」

涙ぐみ土を握り締めた拳は悔しさで震えていた。

『……』

気持ちは分かるよ、なんて軽々しく言えない。僕はなんの努力や苦労もしてこなかった。人より劣るが普通に忍術は使えるし体術だってそれなりに出来てるつもりだ。でも、

『怪我悪化させたら意味ないんじゃない?なんの為に入院してると思ってんの』

「…ソラさんだから言えるんですよ」

『どういう意味、』

「試合に…試合に勝ったから…だから余裕でいられるんだ!同情なんていらない!!もう放っておいて下さい!!」

そんなつもりなかったのに。諭す筈が僕の言葉で逆に彼を怒らせてしまった。
黙りこくった僕を見てしまったと思ったんだろう。慌てて謝罪を口にする。

「す…すみません…つい暴言を…ソラさんは何も悪くないのに」

『いいよ別に。僕の言葉も浅はかだった。それより病室に戻ろう、ここの看護師は煩いからね』

「その…僕はもう少し体を動かしていたいので…」

『そっか。無理しないでね』


無表情でそう告げると彼女はそれ以上何も言わず立ち去った。








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