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愛は僕等を救わない
01

毎朝目を覚ます度に絶望した。
まだ生きているんだと。



目を開けると白い天井に伸ばす包帯が巻かれた自分の片腕が見えた。夢の中で何かを掴もうとした。だが手は虚しくも空を掴んだ。今となっては何を掴もうとしたのか全く思い出せない。夢を見ていた気がするがどんな夢かも忘れた。ただ、懐かしい感じがしたのだけ覚えてる。
静かに腕を下ろし周りを見渡すと隣には大きな窓があり反対側にはイチャイチャパラダイスというタイトルの本を読むカカシ先生が居た。何ていうもん教え子の前で読んでんだか。

「お、やっと起きたか」

『…おはようございます。てかここどこ、なんでここにいるの』

「おはよう。もう正午だけどね。覚えてないのか?中忍試験を重傷で運ばれたんだよ。ってことでここは病室」

……腕飛ばされたとこまでの記憶はあるがその後はどうしても思い出せない。気づいたらここで寝てたんだ。記憶を巡らせあの試合のことを思い出そうとしたが急に頭に鈍器で殴られたような激痛が走った。

『いっ…』

「大丈夫か!」

漸く痛みが消えると静かに言った。

「無理に思い出さなくていい」

そう言ってくれたが気になって仕方ない。
片腕無い…肩から腕が無いんだ。前にも体験したような感覚…変なの。
あ、シカマルに悪いことしたな、あとで謝らないと。

「五日も目覚まさないから心配したんだぞ」

『……そんなに寝てたんだ』

通りで頭が重いわけだ。心配したと言うが病室でイチャパラ読むって…確か内容は如何わしい小説じゃなかったか。

「これお見舞いに」

フルーツが沢山入ったバスケットを渡された。途端お腹の虫が鳴る。お腹が空いてたみたいだ、体は正直というか…カカシ先生は笑った。数日眠っていて何も食べてなかったからとは言え恥ずかしい。取り敢えず笑われたのは無視して気前が良いな、有り難く頂いとこう。


「ソラ」

先程とは違い真剣な声と目に内心吃驚し目を合わせた。

『どうかしました?』

「無茶はするな、と言った筈だが」

『……』

試合前の言葉を思い出し目を合わせてられなくて逸らした。

「顔に怪我しちゃって…痕が残ったらどうするんだ。お前は女としての自覚が足りない」

そっと伸びた手が叩かれると思い目を閉じるが幾ら経っても痛みは来なく変わりに優しく頬に手が触れた。まるで慈しむような優しい手と目。

『…あっあの、他の試合どうなったの』

「んーと…」

ヒナタ対ネジではネジが勝ちナルト対キバではナルトが勝ち、我愛羅対リーでは我愛羅が、チョウジが負けたことを教えてくれた。

『予選で勝った人達はまだ本選あるんだっけ』

「そ。一ヶ月後。細かく言えば25日後だな」

『へー…すぐやればいいのに。本選ってどんなの?』

「お偉いさんが見に来るからな、相応の準備期間だよ。ま、場所が違うだけで予選と変わらないさ。一対一の勝負」

トーナメントになってるらしい。審査員はそのお偉いさん達で資質が十分あると判断された者は例え一回戦で負けていようと中忍になることが出来るという。うわ、これ僕だったら一生中忍になれない。今初めてカカシ先生とイルカ先生を尊敬したかも。

『ふーん』

「他人事みたいにしちゃって…ソラも出るんだよ」

『は、』

「もう一度言うが試合は一ヶ月後。だがソラの回復まで最低でも約三週間はかかる…退院するまで修行は一切出来ないな。俺から一言、頑張れ」

『え、ちょっどういうことだよ!』

「そーいうことだって。俺はサスケの修行つくから。んじゃ」

『無責任な!』

ドアノブに手を掛けた。

『ま…待って!』

「修行なら付き合ってやれないぞ」

『違う、そうじゃないんだ』

まだ何か大事なことを忘れてるような…一体なんだったか。

『そうだ!カブトさんは大蛇丸と繋がっ…』

「ソラ」

『え…』

カカシ先生が近付き手が触れたと思えば、忘れた。おかしいな…あれほど言いたかったことをあっさり忘れてしまった。何言おうとしたんだっけ…。

「ゆっくり休むんだぞ」

『え、あぁ…』

無情にもドアは閉まり行ってしまった。

ふと窓を見ると硝子に僕の顔が写った。顔半分覆うほどに右目に包帯が巻かれていた。道理で視界が狭いわけだ。

『(カカシ先生みたい…)』

嫌だな早く取れないかなコレ。
先程は気づかなかったが窓辺に二つシンプルな花瓶があり種類の違う花が飾られていた。片方は原色の、もう片方は控えめな淡い色合いの地味な、けど可愛い花。何故かヒナタを思い出した。二つの花からほんのり良い香りがする。
カカシ先生かな?後で会ったらお礼言わなくちゃ。




バタン、とドアを閉めた。
ドアの向こうで壁に凭れかかり待っていたのはサスケだった。

「いいのか?入らなくて」

「ああ」

(本当は会いたいくせに…)

何意地張ってんだか。心配でここまで来たのに。

「さて、修行に行くか」








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