愛は僕等を救わない
04
一瞬、必死に僕の名前を叫ぶヒナタが見えた。
今僕に近づいてはいけない。
危ないから―――
そう応えようと思ったら視界は暗転し地面に這い蹲う自身の体。背中に誰か乗っていて苦しい重い。腕はその誰かに拘束され全く身動きが取れなくなっていた。叩きつけられたんだろう、胸元が苦しくて上手く空気を取り込めない。
どうして?何が起こってる?
『退けて…』
やっと発した声は呻き声に似ていて。僕を拘束していたのはカカシ先生で「悪かった」と手を差し出してくれたが掴みはしなかった。幼稚な抵抗だ。
何故かヒナタの手を掴んで紅先生が睨んできたがこの数十分で嫌われるようなことをした覚えはない。というか試合中の筈なのにどうしてカカシ先生とヒナタと紅先生がここにいるんだ。意味が分からないまま周りの刺すような視線に耐えられず目を伏せれば真っ赤に濡れた自分の服と滴り落ちる血。片腕が、無い。それに気づくと一気に痛みが襲う。
そうか…カブトさんに…今彼は?
『何…これ、』
どうなってる?目の前では粉々に砕けた壁の瓦礫の元へ慌てて救護班が駆け寄る。あの下にカブトさんがいるらしい。僕が、やった?
嗚呼、周囲が向けるこの眼差しを知ってる。これは奇怪、異質な者へ向けるおぞましさや憐れみを含んだ目だ。
込み上げる嘔吐感に堪えきれず涙が滲み吐き出すが混ざりあった胃液と血しか出ない。
「ソラ!大丈夫か!」
『…っ触るな!!』
触れようとしていた手をパシッと弾いてしまった。途端に悲しそうな表情をする彼を見てハッと我に返った。
『ごめん…』
シカマルの目を見れなくて目線は地面へと下がる。
紅先生の手を振り払い駆けつけてきたヒナタが僕の名前を呼んだ。
「ソラちゃん…」
『なんで泣きそうな顔してるの』
笑って見せたがヒナタの綺麗な瞳は潤んだ目の中揺れていた。
『ほら、笑って』
左手でヒナタの頬を引っ張れば「痛いよ」なんて言って笑った。
担架に乗れと救護班の人達が急かすものだから手を放して乗ろうとしたがヒナタがその手を掴んだ。
「ごっ…ごめんなさい。なんでもないの」
最後に目を細め笑ったが彼女は悲愴な顔をするだけだった。
『…疲れた』
目を閉じ駆けつけた救護班へ身を委ねた。
追加0318
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