愛は僕等を救わない
03
様子見とは決めたがどうしよう。カブトさんも僕の出方を伺ってるようで下手に近づかず互いに武器を駆使しての攻防中距離戦となっている。現在残りクナイが三本となった。…先のことを考えると使いたくない。チャクラはなるべく温存しときたいんだよなぁ…なんて言ってられないか。
先に動き出したのは僕の方。足にチャクラを練り素早く駆け出しカブトさんの背後に周りこみ印を組む。ガラ空きだ。
火遁、業火球!
口元から吹き出した炎は勢いよく燃え広がった。
『ケホッ』
慣れない術のせいで噎せるし口周りがヒリヒリするしで痛い。
やったか?…それにしては手応えが感じられなかった。両手を合わせ発生した風は炎を打ち消したがそこには墨となった木の欠片があるだけだった。
変わり身の術…いつの間に。気付けなかった自分が腹立たしい。思わず舌打ちしていた。集中できていない、焦ってる?んな訳ない。落ち着け自分。
先ずは本体を見つけなくては。
どこからか顔面目掛けて真っ直ぐ飛んできた手裏剣をクナイで弾いた。
「流石だ。分りやすかったかな」
『見くびるな』
睨みながら吐けば軽視したように笑った。
その顔が苦手なんだ。貼り付けた笑みが気持ち悪い。
「左腹部…怪我しているようだね。庇いながら動いてるから分かりやすい」
取り敢えず一発殴りたくてチャクラで加速した僕は一瞬で近づき顔面目掛けて殴ったつもりだった。なのに躱されていて。ヤバイと思った時には遅かった。
『いったぁ…』
蹴られたお腹を見ると服に血が滲んでいた。傷口が開いてしまったようだ。ああ、最悪。足を伝わって地面にポタリと落ちた。
カブトさんが投げた丸い玉から煙が溢れ直ぐに辺り一面白い煙が覆う。
煙玉か、…何も見えない。下手に近付いて攻撃されるのは嫌だしここは一旦距離をとろう。
そう思ったのに
「死の森で大蛇丸様が言った言葉…覚えてるかい?」
距離は縮まることなく僕と至近距離だ。
どうしてその名をカブトさんが…。
思考回路が上手く働かない。
「僕がそのきっかけをあげよう」
目を見開き見つめる先の彼は初めて会った時みたいな笑顔だった。
『何言って…』
ガンッ
『っ!!』
起爆札が何枚か付いたクナイを右肩に刺された。それも深く。反対の手で早く早くと焦って抜こうとするが中々取れない。義手だから痛みは感じないが爆発したら腕ごと吹き飛んでしまう。
クソッ油断した!
カブトさんは僕から離れ印を結ぶ。
「解!」
それと同時に爆発が起こり辺りは爆風で何もかも見えない。
『うっ…』
顔も肩も、ああっもう全身が痛い。呻き声が漏れた。うっすら瞼を上げると目の前に血が広がる。全部自分の…。まだこんなに血が出るのか…。
起き上がらなくちゃ、頭では分かってるのに体が動かない。
「戦闘不能で…」
「待てよ!」
審判の声を遮ったのはナルトだった。
「ナルト、ソラはもう…」
「まだだ。まだやれる!立てよソラ!!」
サクラの制止の声も聞かず必死に叫んだ。
その声に応えてる様にゆっくり、ゆっくりと腕を支えに地面に尽き起き上がろうとする。
『はぁ…はぁ…ケホッ』
吐血しながら左腕に体重をかけそして両足に全体重をかけなんとか起き上がった。
右腕が、無い。肩から無くなっていた。吹き飛ばされた腕は近くに転がっていたがもうボロボロだ。アレはもう使い物にならない。
『…酷いことするんだな』
聞こえたのかは分からないがカブトさんはニヒルに口角を上げた。
片腕が無いだけなのにバランスが上手く取れず足下がふらつく。顔半分も痛くて片目が開けられなく視界が悪い。
「片手じゃ印も結べないだろう」
『両手でしか印を結べないって誰が言った?』
「まさか!」
片手で素早く印を結ぶ。
が、何も起きない。
起きる筈がない。それが当たり前なんだが。
『…なーんてできるわけねぇだろっ!』
残り僅かなチャクラを足に溜め、カブトさんの腹部目掛けて蹴った。
蹴り飛ばされたカブトさんは勢いの余り壁に背中をぶつけた。その壁の辺りには亀裂が入っていた。
『ハァ…ハァ…』
少し動いただけで多量の血が腹部や足を伝い滴り落ちる。
痛い。頭がクラクラする。もうダメなのかな、何もできないまま終わるのか…嫌だなぁ…。
なんだろう、気色が鮮明に見える。雑音も聞こえない。聞こえるのは自分の荒い息遣いだけ。
何かに侵食されていく変な気分。あはは…本当僕どうしちゃったんだよ。
そこから意識がプツンと切れた。
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