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愛は僕等を救わない
02

急がず、かといってのんびりもせず普段通りのペースで講堂の中心へテクテク歩いて行くと対戦者は既に審判の側に悠々と立っていた。
僕の対戦相手、カブトさんと対峙する。目の前に立つと身長差が結構あった。10…15…いや、それよりも僕より高い。なんだろう、自分でも驚くほど落ち着いていて冷静だ。それを試合で活かせればいいが僕だからなぁ…難しい。

「やあ、」

『………』

ニコッと穏やかな声で微笑むがレンズ越しの目は笑ってない。凄く嫌いな目だ。初めて会った時は人が良さそうだと思ったが今はそう思わない。どこか裏がありそうで胡散臭いんだ、その笑みだって。

「まさか君と当たるなんてね…。正直やりづらい…けど遠慮は要らないよ」

『そのつもり』

「あははっ。そうか、なら余計な一言だったかな」

随分と余裕そうな…『はいそうですね』なんて言えず無言を貫いた。確か今回が七回目と言ってたか…六回も落ちてるんだ、大丈夫。何が原因で落ちたかは知らないが強そうに見えないし負ける筈がない。勝算はないが。
ああ、だが彼は僕のことを知ってるんだ、忍識札で。得意な術から苦手な術まで把握してるに違いない(殆ど苦手というか嫌いなので別にいいが)。それに比べ僕は全くと言っていいほど何も知らない。本当に大丈夫なのかこの試合…。


「ソラファイトー!!」

いのちゃんの声だ、恥ずかしいお願いだから僕の名前を呼ばないで。…ナルトまで何か叫んでる。物凄く耳を塞ぎたくなった。
コホン、と審判が咳払いをした。先程から度々咳をしているけど風邪かな。審判なんて他の上忍に任せて早く帰った方がいいと思う。

「それではいいですか」

カブトさんは返事をし、僕は小さく頷いた。

「第七回戦、カブト対ソラ」

名前を呼ばれた途端久々に緊張し全身が強張った。

「始め!」

声と共に相手が間合いを取りヒュッと投げた手裏剣が僕の頬を掠めた。一瞬熱くなった頬に手を寄せると血が出ていた。
あ、切れてる。

「…何故避けない?」

『当たんないと思ったから』

当てる気ないなと。あと極力動きたくない。だから避けなかった。決して緊張して動けなかった訳じゃないから。結果的に当たってしまったけど掠った程度。少しヒリヒリするが痛くはない。
始めの合図があったのにも関わらず一歩も動いてなかったことにいのちゃんとサクラから怒声が飛んだ。…カカシ先生やシカマルの呆れた顔が容易に想像できる。

『やるしかないか…』

一息吐きカブトさんを見た。いつまでもジッとしてる訳にはいかないし。この先嫌でも動くことになる。
まずは様子見ってとこかな。








あきゅろす。
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