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愛は僕等を救わない
01


安堵のため息を吐いたのも束の間、次は誰かと電気掲示板を見れば僕の名前が出ていた。何度見つめても僕の名前が記されていて変わることはない。

「次はソラね…」

『あー…』

呻き声しか出なかった。戦いたくない戦いたくない戦いたくない。早く家に帰って寝たい。叶うなら今すぐにでも。ああ、でも寝ると悪夢が…眠すぎて頭が可笑しくなりそうだ。欠伸止まんないし…正直戦う体力なんて残ってない。気力で頑張るしかないのか。

「相手が誰だろうが全力で戦うのよ!あんたいつも手抜くんだから」

『手抜いてるつもりは…』

…まぁ、あるよね。だって疲れる。常に全力ってリーじゃあるまいし。

「棄権しねぇだろーなぁ…」

『しないっての。負ける気はない』

「おぉ!ソラにしては強気だってば」

『勝つ気もないけど』

「それじゃダメじゃない!」

『いてっ!』

ガツンと頭をグーで殴られた。とても怪我人とは思えない程の力だ。段々僕への扱いが酷くなってきたような…ナルト化してきたのは気のせいじゃない。そのうち顔面グーで殴られるんじゃないだろうか。

「俺も全力で応援するぞ!」

『全力でお断りします』

無駄にガイ先生の歯が輝いてる…けど暑苦しいのには変わりない。それと大声で応援されては恥ずかしい以前に集中できない。気が散る。ハッキリ言い過ぎたせいかなんか項垂れてるが気にしない。

「兎も角、気を緩めるなよ」

『はーい』

「もし俺が危険だと判断したら即――」

『心配性ですねカカシ先生は。僕は大丈夫ですから』

そう言うとわしゃわしゃ頭を撫でられた。嫌いじゃないがなんだか…親みたい。親なんていたことないからよく知らないけど…いたらこんな感じに心配してくれるのかな。

『………』

「な…なんだ?顔に何か付いてるか?」

『いや、変化してカカシ先生が僕の代わりに出ればいいのになーって』

「バカっ!!」

『ぶっ!』

今度のは先程よりも威力が大分強くなってる。物凄く痛い。泣きたい気分だ。ただ思ったことを口に出しただけなのに。

「いいからアンタはもう行きなさい!」

『はいはい』

痛さのあまり少し涙目になり頭を摩ってると小さな瘤が出来ていた。うわあ…押すと痛い。絶対サクラのせいじゃないか。女子のくせに馬鹿力…加減ってものを知らないのか。


「さっきみたくこっから飛び降りればいーのに」

『嫌だよ危ない』

今やったら絶対足の骨折れるって。さっきのは…たまたま出来ただけだ。勢いって怖いなぁ、勢いがあれば出来なかったものもなんでも出来てしまう。殆ど失敗に終わるだろうが。
今回はちゃんと階段へ向かう。試合の終わったシカマルと擦れ違い、その時に『お疲れさん』と呟くと呼び止められた。

「ソラ」

『ん?』

「…勝てよ」

「負けんな」じゃなくて「勝て」か…これは頑張ってみるしかないな。

『んー頑張るわ』

適当に、みっともない姿は見られないようにしなくては。
なんて思ったけど僕の実力なんて高が知れてる。すぐに負けないようにだけしよう、長引くのは嫌だが早く決着がつくのはもっと嫌だ。




「そーいえばソラの本気って見たことないかも」

波の国や死の森での危機的状況下の時は恐らく本気で戦っていただろうが未だによく理解できないところがある。

「めんどいとかシカマルみたいなこと言っていっつも適当だからなぁ。体術は好きって聞いたような…」

私も体術は割りと得意と聞いたことあるがそれが本当かどうかは怪しい。歩くこと自体が面倒臭いと言ってたソラだ、得意な術や好きな物はないのかもしれない。

「死の森で一度拝見しましたが馴れた動きでとてもキレがありました。今回どんな戦い方をするのか楽しみですね」

丸い目が輝いてる…。体術と聞いてリーさんも体術を主としてるから親近感が湧くのかな。


「カカシ先生…さっきから怖い顔して見てたけどどうしたの?」

「…ああ、なんでもないよ」

私が声をかけると微笑したが正に貼り付けたような笑みだった。
嘘、なんでもない訳がない。食い入るようにソラを見つめていた。恐らく吐血していたこと知ってるのか…カカシ先生なら私達の知らないソラを知っていそう。聞きたい、けど今聞くことじゃない。聞いてどうする。








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