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愛は僕等を救わない
01




翌日―
試験当日、僕はあの夢も見ず寝坊しないでちゃんと来た。…当たり前なんだろうが。でもシカマルやチョウジよりも早く来たんだ、今日の自分を褒めよう。後から来たシカマルに少し馬鹿にされたがそれもよしとしよう。

『試験って何かなぁ』

「大方分身の術だろ。前の試験もそうだったし」

隣りに座るシカマルは頭の後ろで腕を組み興味無さそうに答えた。

『分身の術か…』

シカマルの言う事は大体当たる。テストの問題も教えてもらったとこだけ勉強したら今までにないくらいの良い点数を取れたのだ。次のテストは余裕ぶっこいて怠けていたので悲惨な結果に終わったが。

話しているとイルカ先生が来た。そして試験について説明を始める。

「…で、卒業試験は分身の術にする」

『おっスゴい!シカマルの言った通りだ』

「こりゃ余裕だな」

得意でも不得意でも無い分身の術。いや、分身の術や変化の術は基本中の基本。できて当たり前。できないのは……。

僕は一番後ろの席だからよく見えるが斜め前の方でナルトが唸ってる。きっと嫌いなんだろうな…分身の術。二回も落ちてるらしいし今回も落ちたら流石にシャレにならない。

「では呼ばれた者から隣りの教室にくるように」

そしてイルカ先生は教室から出て行った。

「どうしよう…」

『どうしたのナルト』

「俺の一番苦手な術なんだってばよ」

『どんまい』

やっぱり。そんな難しくはないと思うけど…感じ方人それぞれか。

「なんか簡単に出来る方法教えてくれよ」

『普通にやれば出来るよ』

「出来ないから言ってんだってばよ」

『ファイト』

後ろでまだ何か言ってた気がするが気にせず自分の席へと戻った。




「次ソラちゃんだよ」

『あー…うん』

ふとヒナタの声で目を醒ました。ヤバッいつの間にか寝てた。結構寝たかと思ったがそうでもなかったらしい。

『あ、合格したんだ』

「うん」

大事そうに右手に握られている額当てを見て言うとヒナタは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「どこに付けようかな」なんて楽しそうに言うヒナタは本当に可愛い!抱き締めたいけどもう行かなくちゃ。


教室を出るとシカマルに会った。どうやら合格したらしい。落ちるわけないか、シカマルだし。んでチョウジも合格したとか。

「ソラこんな簡単な試験落ちんじゃねぇぞ」

『分かってるって。絶対合格する』

「おー頑張れ」


じゃあな、とシカマルと別れいざ試験の行われる教室の扉に手を掛け固まる。

『(緊張してきた…)』

大丈夫、と何回も自分に言い聞かせ教室に入った。

『失礼しまーす』

「如月ソラ」

試験官はイルカ先生とミズキ先生か…二人の前に在る机には沢山の額当てが置いてあった。

『はい』

「初めていいぞ」

視線が…見られるって好きじゃない。早く終わらせてしまおう。胸元で印を結んだ。

『分身の術』

ぼんっ


僕の隣りに出たのは三人の自分。…自分がこんなにいるのって気持ち悪いな…けど成功は成功だ。

「合格!」

そして渡されたのは真新しい木の葉の額当て。
イルカ先生がよくやった、と頭をわしゃわしゃ撫でてくれた。それが嬉しくて頬が綻んだ。。

「卒業おめでとう」

ミズキ先生はニッコリと笑ってくれた。

『ありがとうございます』

額当てを握りしめ教室を出た。



『(これで僕も忍者か…)』

なんというか…なってしまった、忍者に。勿論なる為にアカデミー通っていたがイマイチ忍者になったという実感が無い。まだまだ心は幼い侭だ。


外に出て、僕も先程のヒナタ同様この額当てをどこに付けようか悩んでいると前方に木のブランコに乗ったナルトを見つけた。

『ナルトー』

「ソラか…」

名前を呼ぶと振り返ったがその表情はとても悲しそうだった。しかも名前を呼んだ人物が僕である事にガッカリした様子。僕で悪かったな…サクラちゃんだったら良かったのか。

『どうした?元気なさそうだけど』

「…たんだ」

『え?』

聞き取れず思わず聞き返した。

「試験に落ちたんだ…」

『あー…』

こういう時本当になんて声を掛けたらいいのか分らない。気の利いた言葉が中々思い付かないんだ。

「ソラは合格したんだな」

『まぁ…うん』

下に逸らした目が僕の持つ額当てを捕らえたのだろう、気まずい…何か別の話題を…。


『ねぇ、これから暇?』

「暇っちゃー暇だけど…」

突然何を言い出すのかとナルトはキョトンとした。

『なら一緒に帰ろ。んで遊ぼ。駄菓子屋でお菓子買って公園で…――』

「親来てるじゃねぇの?」

『来てない…僕に親はいないよ。ナルトと同じ』

「…知らなかったってばよ」

『あんま皆には言ってないから。んじゃ帰ろう』

自然とナルトの手を掴んだ。躊躇せずナルトも握ってくれた。

『僕の住んでるアパートとナルトの住んでるアパートって場所近くだったよね?』

「ああ。確かに近かったような…帰り道一緒だったよな?」

『うん、そう。よく駄菓子買ってたな〜』

勿論今もよく買う。


「よーしっここから駄菓子屋まで競争だってばよ!」

『走るの!?体力が、』

よーいドンで今にも走り出そうとするナルトに男性が近付いて来た。

「ナルト君少しいいかい?」

「ミズキ先生!ごめんソラ…」

どうやら僕は邪魔みたいだ。さっさと立ち去ろう。

『君が謝る事じゃないよんじゃまたね』

「またな!」

最後は元気良く別れ二人の後ろ姿を見送った。

ミズキ先生がナルトに一体何の用だろう?
…いっか。帰ろう、早くこの場を離れたい。


耳に入る生徒とその親の笑い声がなんとも不快で居心地が悪かった。


逃げる様に駆け出した。




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あきゅろす。
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