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愛は僕等を救わない
04


「第五回戦。テンテン対テマリ、前へ」

テンテンは威嚇する様に相手を睨み相手もそれに怯むことなく両者共に睨み合っている。
二回連続女同士の試合だ。残る女子はヒナタと音忍のキンと僕含め三人となった。ヒナタとだけは何がなんでも当たりたくない。当たったら誰がなんと言おうと迷わず棄権するつもりだ。あとは適当に戦えたら…なんて。

「テンテーン青春パワーでーす!!」

うるさ、傍で叫ばないで。元気すぎるだろ。ガイ先生も乗らないで。本当よく似てるあの二人。
テンテンも可哀想に。あんな大きな声で叫ばれたら恥ずかしいし気が散って試合に集中できないだろうに。

「ソラさんも一緒に声援を送りましょう!」

『遠慮し…』

「なんでですか!」

せめて最後まで言わせてほしかった。にしても顔が近い近い声大きい。そんなに寄ったら太い眉が目に焼き付く…あ、意外と睫毛長い…って違う。後退りながら応えた。

『班違うし』

「関係ないですよ!同じ木ノ葉なんですから」

「そうだぞ。リーから君の話しは聞いた。遠慮することはない」

ガイ先生に一体何を話したの。内容が気になる。多分死の森での音忍とのことだろうなぁ。というかそれしか思い付かない。あと、同じ木ノ葉の里だからって理由だとここにいる人達殆ど木ノ葉だから皆応援しなきゃいけないことになる。木ノ葉同士当たるかもしれない(人数的に絶対当たる)のに馬鹿らし。口には出さないけど。

『喉痛いんで』

「風邪ですか!?」

『かもしんない』

「それは大変だ、俺が万が一の為に作っておいたこの薬を飲むといい!きっとすぐに良くなるぞ」

『いいです、それより試合見て下さい』

その見るからに胡散臭い怪しい薬なんか絶対飲みたくない。何を原料に作ったんだか…怖っ。
分かりやすい嘘吐いたのにどうしてこうも暑苦しいんだろう。僕のことなんかほっとけばいいのに…是非そうしてくれるとありがたい。終始ネジは全く介入する様子がなかった。同じ班のくせに関わりたくないことは放置か。少しくらい間をもってくれても良かったのに。無駄なことはしない主義なんだろうなきっと。僕が無駄なことだと思われたのがなんだか悲しい。

『あの人も体術を得意としてるの?』

「テンテンは体術もそうですが武器攻撃が得意です。凄いんですよ!沢山の武器を操り相手に攻撃させる隙を与えないんです」

へー、その武器攻撃がどういうものか気になる。忍術は使わないのかな…。テマリの方は背中に大きな扇子っぽい物を背負っている。あれを使って戦うんだろうな。重そう。瓢箪よりは軽そうだけども。…そういえば砂の国の三人は必ず何か大きな物を持ってる、瓢箪とか鴉に扇子…どうでもいいことだなこれは。

未だ喋り続けるリーとガイ先生を聞き流して振り返り後ろの壁に凭れ掛かり気絶してる筈のいのちゃんとサクラを見れば既に目を覚ましており仲良く談笑している、と思ったら二人共顔をプイっと背けた。結局仲良いのか悪いのか分からない。あれだ、正に喧嘩するほど仲が良いってヤツ。


ふとヒナタが視界に入った。そういえばここに来てから喋ってないなと思い話しに行った。

…丸いサングラスの向こう側の瞳がどんな色をしてるのか地味に気になる。

『シノ勝ったらしいね』

「らしいじゃなく勝ったんだ。見てなかったのか?」

『ごめん。丁度トイレ行っててさ』

「うんこかよ。きったねー」

『違うから。キバのが汚い』

デリカシーがないのか。紅先生が苦笑いしてるじゃないか!シノは相変わらず表情を崩さない。

「ソラちゃん…沢山怪我してる」

『あの森に五日間もいたんだ無傷の人のが珍しいよ』

「そうだけど…その服に付いてる血ってソラちゃんの?」

『違う』

咄嗟に出たのは嘘だった。何か言えばいいんだろうけど思いつかない。敵の返り血を浴びたとか言えば尚更心配するだろうしそのことについては何も言わなかった。

「ボロボロじゃねーか。だっせーの」

『お前うっざ』

君も対して変わらないじゃないか。喧嘩売ってんの?赤丸みたいに少しは黙っててくれないのか。

「キバ君…言い過ぎだよ」

『そーそー。それにキバだって掠り傷いっぱい出来てる』

「ソラ程じゃねーよ」

なんでもかんでも僕と比べたら全て良くなるから比べちゃダメだと思う。

「これ良かったら使って。少し染みるけど放って置くよりいいと思うから…」

『ありがとう。大事に使うよ』

塗り薬の入った丸く小さな入れ物を受け取った。
再度思う。ヒナタと絶対当たりたくないと。

『この試験が終わったら甘味処行こう』

「うん!」

そしてお金を気にせずお腹いっぱいになるまで食べるんだ。
久しぶりに見た笑顔に僕の表情も少し綻んだ。








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