愛は僕等を救わない
02
間髪入れず第四回戦が始まろうとしている。
一試合しか見てないからか流れが早く感じる。もうすぐで半分が終わるのか…。
掲示板を見ると四回戦の次の者の名前が既に出ていた。サクラといのちゃん…凄い組み合わせ。恋のライバルとかで顔を会わせれば喧嘩するものの二人はくの一でも特に仲が良かったしやりにくいだろうに。試合の組み合わせはどうやって決めてるんだろう、やっぱ近い能力の人同士で当ててるのかな。それともランダム…だったら嫌だなぁ。例えば僕が我愛羅やリーと当たることも有り得るわけで。……当たったらその時はその時だ。先のことは考えても答えに辿り着ける訳でもないし気が重くなるから止める。
戻すと全体的に考えればサクラよりいのちゃんの方が優ってる。良くて引き分け…か。
あ、サクラが暴言吐いた。
「アンタ誰に向かって口聞いてんのか分かってんの!図に乗んなよ泣き虫サクラがー!!」
サクラが煽りいのちゃんが今までに見たことないくらい怒ってる。大丈夫なのかなコレ。
「サクラちゃん言い過ぎだってばよ…いのの奴すんげー目してこえーもん」
『僕あんなに怒ったの初めて見た』
「俺もだってばよ」
『意外。めっちゃ怒らせてそう』
「んなことねーって」
そうは言うけどサクラはよくナルトに向かって怒るよね、そりゃあもう鬼のような形相で。
「サクラはいたずらに自分の力を誇示したり…人を傷つけるような子じゃなあない」
知ってる。同じ班になって少しはサクラのことが分かった、気がする。でもどうして煽ることに繋がるのか意味が分からないといった表情をすればカカシ先生が簡単に教えてくれた。
「いのに容赦されたり手加減されるのが嫌なんだよ」
あー…なるほど。だからあんなこと言ったのか。
カカシ先生に向けていた目線を下に向けると二人共睨み合ったまま額当てを付けた。
『女同士の喧嘩って怖い』
「ソラも女だってば」
『そうだけど僕基本喧嘩しないから…うん』
したら後々仲直りすんのも面倒だし…関わらないのが良い。だから友達少ないのかも。自己簡潔した。
「そーいえばソラが怒ったとこ見たことないってばよ」
『だっけ?』
言われてみればそうかも。僕には感情を表すということに少し欠けてる。ムカッとすることはあるがそれ以上はあまり…以前誰かに言われて初めて自分で気づいた。誰だったっけ…。
あ、さっきカカシ先生に向かって怒ったというか怒鳴った。勿論ナルトはそんなこと知らない。知る必要もない。
「ばーか」
『……』
何がしたいんだ君は。何、もしかして僕を怒らせようとしてるのか?なんで今?さっきの会話が原因?怒らせてどうするつもりだ、バカは君だ。
「怒った?」
『呆れた』
なーんだ、とつまんなそうに目を細め頭の後ろで腕を組む。
『んなこと言われたくらいで怒んないよ。ナルトじゃあるまいし』
「どーいう意味だよ!」
『ほら、そーいうとこ』
言い返せなく押し黙った。なんかまだ思考が幼い。何度だって言い負かせるのは可能だ。
「いててっ何すんだってばよ!」
『馬鹿と言われていい気はしない』
イラッとした。だから両頬を引っ張ったり抓った。
『ブッ変な顔』
「ソラのせいだろ!」
『ナルトも抵抗しないから』
「雑談は止めて試合をしっかり見るんだぞ。次はお前らがあの場に立つかもしれないんだ」
見かねたカカシ先生が言い、それにナルトは返事をし僕も軽く頷いた。
「仲が良いんですね、二人とも」
『…そうかな』
「そうです!」
微笑ましそうにリーは言うがそんなに嬉しいことじゃない。
さて、のんびり見学といこうか。
『ふあ…』
欠伸したらナルトに怒られカカシ先生には呆れた目で見られた。だって長いし…かれこれもう十分は経ってる筈。いつまで続くんだろう。二人の力が互角だったからここまで続くんだろうけど…この第四試合が非常に長く感じる。姿勢悪いとか注意されたのを聞き流し柵に寄りかかり頬杖をつきながら眺める。
あ、両者の拳が共に頬に当たった。痛そ…。
サクラの挑発で更に怒ったいのは自分の髪をクナイで切った。あんなに伸ばしてたのに勿体ない…。彼女も好きな人の為に伸ばしていると話してた。少しでも好きな彼に意識してもらう為に、見てもらう為に。
「すぐにアンタの口から参ったって言わせてやるー!」
切った髪を床にバラまき両手を前で組んだ。あの印は…心転身だったか、術者の精神エネルギーを丸ごと放出し敵にぶつけ相手の精神を数分間乗っ取りその体を奪い取る術。だがその術を使うには欠点がある。放出した精神エネルギーは直線的でスピードが偉く遅い。それと精神エネルギーが相手にぶつかり損ねた場合でも数分間は術者の体に戻れない。そもそもあれは戦闘向きじゃない。相手が動き回ってればまず当たらない。
いのちゃんだって分かってる筈。床に散らかってる髪を利用すれば可能かもしれないが…何を考えてるのか全く分からない。
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