愛は僕等を救わない
01
「大丈夫か?」
『大丈夫です。あんなに声出したの久しぶりで疲れただけですから』
フラフラしていたのを支えられながら途中まで歩いてきた。だがそろそろ人目につくので一人で歩き始める。適当な理由を言えばカカシ先生に不審そうな目で見られたが本当のことだ。少し喉痛いし。胸は苦しいままだけど。
この予選のことだが僕が無理言って受けることになった。カカシ先生も分かってくれたみたいで今度は止めなかった。試合中危険だと判断したら止めに入ると言っていたがそれだけは避けたい。
「あーっ!遅いじゃないソラ!」
『ごめん…』
「いいわよ別に。でもとっくにサスケ君の試合終わっちゃったわ。勿論サスケ君が勝ったけどね!」
『カカシ先生から聞いた』
「なんだ残念。私から先に言おうと思ってたのに。それはそうとカカシ先生、サスケ君は大丈夫なの!?」
「ま、大丈夫だ。今病室でぐっすりだ」
それを聞いてサクラはホッと胸を撫で下ろした。
「遅かったな〜ソラ二試合目も終わったってばよ。もしかして…」
ナルトが僕の隣に来てニヤニヤしだした。考えてることは大体予想がつく。
『少し迷っただけだよ』
「迷った、ねぇ…」
この顔は信じてないな…。ほっておこう。いや、その前に聞きたいことがあった。
『二試合目は誰だった?』
「シノとあと…なんだっけ、音忍の奴だったってばよ」
それでシノが勝ったと。ナルトが言うには虫が体を突き破って出てきて気持ち悪かったという。…いなくて良かったかもしれない。想像したらかなり気分が悪い。それに予選の説明聞いてる時のことをまだ許した訳じゃない。
その試合について隣にいるリーが詳しく説明してくれた。詳しくといっても途中ガイ先生が入ってきたせいでややこしくなり暑苦しかった。顔が。
そうこうしてる間に掲示板に名前が出た。僕の出番はまだのようだ。次は…砂のカンクロウ。全身真っ黒で顔に独特な化粧してる奴。相手は知らない名前…カブトさんの仲間だ。ということは何回もこの試験を受けているのか?だったら彼の方が有利だが砂の忍は侮れない。カンクロウが持ってるあの…包帯に巻かれたヤツの中身が凄く気になる。初めて前に会った時アレを「鴉」と言った。恐らくチャクラで操る傀儡か…。この試合で見れるといいな。木ノ葉には滅多に傀儡師はいないから。
砂の忍の方が強いんだろうなと鉄の棒に前のめりに寄りかかり観戦していたらあっという間にカンクロウの体が相手によって束縛された。腕は首に、足は足に、カンクロウの体に巻き付き身動き出来ない状態だ。にしても気持ち悪い。骨がないのかってくらいぐにゃぐにゃしてる。…お風呂上がりに毎日柔軟したらあんな風に慣れるかな。
アホなこと考えてるとゴキッと鈍い音がした。カンクロウの頭がブランブラン揺れてる。首の骨が折れたんだ。どんだけ腕力あるんだよ。片腕で折るなんて、腕相撲したら即腕の骨が折れるんだろうか。うわ、最強じゃん。
「し、死んじまったのかな」
『まだだ。審判は何も言ってない』
「でも首折れてますよ。凄い音しましたし…」
『見てたら分かる』
それ以上は言わず怪訝そうな顔をしたナルトとリーを一瞥し試合を見据えた。
先程とは一変して首の折れたカンクロウだった人物の腕が相手へ巻き付き包帯の中から現れたのは紛れもないカンクロウだった。本体はこっちだったようだ。
『………』
グロい。内臓が飛び出したとかじゃないんだけど相手の全身の骨が折れる音が嫌というほどハッキリと聞こえた。脳内でその光景と音が繰り返される。自分だったら…と置き換えて考えると全身が痛くて気持ち悪くて動悸が速くなった。そんなこと考えなきゃいいんだがつい…なんかもう癖みたいなもんだ。感受性が豊かというか。
あんな痛い思いするなら棄権した方が良かったなと一瞬でも思ってしまった自分を殴りたい。皆覚悟してこの場に立っているんだから今更逃げ出すなんてことは絶対しない。
「試合続行不可能により勝者カンクロウ!」
勝者、カンクロウは余裕そうな表情を浮かべ敗者は担架に乗せられ奥へ運ばれていく。
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