愛は僕等を救わない 03 「おーいソラー」 『………』 「起きてよー」 『ん……』 「ソラー置いてくよー」 『ん…あとちょっとだけ…』 「駄目だこりゃ」 幾らチョウジがソラの体を揺さぶって呼んでも寝返りをし寝言を言うだけで起きる様子は無い。 「シカマルも何か言ってよ僕には無理だよ」 「めんどくせぇな…」 どうしたものか…。 置き去りにしたい気持ちも有るが良心で止めとく。陽は低く夕陽が俺達以外誰もいない教室を照らす。そういえばヒナタもいない、確かソラとヒナタは仲良いんだっけか。 「仕方ねぇな」 「?」 「ヒナタの奴先かえっ…」 『ヒナタぁああああ!!』 「っ!?」 「うわっ!」 ビックリした。 普段から滅多に大声を出さないから余計に驚く。ヒナタと名前を口にするだけで起きるなんて変な奴。それだけ好きなのかと少し呆れる。 「お、起きた」 『あれ二人ともおはよー』 「馬鹿もう夕方だ」 目を擦り、教室を見渡し窓から夕陽を確認すると『本当だ』と呟いた。呑気な奴だ…俺も人の事言えないが。 『僕結構寝てたんだね…』 「いびき掻いてた」 『嘘だろ!?』 「嘘」 『なんだよ、良かった…』 「何回名前呼んでも起きなかったよ」 『ごめん…』 「別にいい」 毎日じゃなければ…という言葉を飲み込んで。 机から腰を降ろした。 『ねぇヒナタは?帰っちゃったかな…帰っちゃったよね…』 「ああ、これヒナタから」 『紙?』 チョウジが紙を取り出しソラに小さな紙を渡した。そういえば帰る前モジモジしながらチョウジになんか渡してたっけ。 『………』 一言お礼を言い、一通り紙に目を向ける。恐らく内容は先帰るとかそんな感じの事だろう。 「帰るぞ」 『あ、うん。ちょっと待って!』 俺とチョウジが教室を出るとソラも慌てて後に着いてくる。 『明日試験かぁ』 「めんどくせぇ」 「シカマルはそればっかだね」 「めんどくせぇもんはめんどくせぇんだよ」 『そんなんじゃ試験落ちるよ。てか落ちろ』 「ソラだって知ってんだろ。あんな簡単な試験に落ちる奴はそうそういねぇって」 『そうそう…ね』 「(二人ともナルトはカウントしないのか)」 『合格したら何か奢って』 「駄菓子がいいなぁ」 『僕も賛成。安いのね』 「だからなんでだよ。絶対受かんだから必ず奢んなきゃならねぇだろ」 しかも何故か俺が奢る前提。 『ケチー』 「んなら俺が合格したらお前が奢れ」 『…中忍になったらなんか奢ってあげる』 「よし言ったな」 「中忍なんて無理だよ」 『チョウジは諦めんの早すぎ』 「だ…だって…」 『だってじゃない!』 『んじゃ僕あっちだから』 「じゃあな」 「また明日」 『バイバイ』 ソラは小さく手を振り、自分の家へ帰る為背を向け歩き出す。俺達も背を向け歩く。 アイツ…一人で暮らしてんだったな…前は俺ん家の家族とよく一緒に飯食ってたっけ。 少し歩くと突然シカマルが足を止めた。 「どうしたの?」 「わりぃ、少し待ってくれ」 「いいよ」 振り返り名前を叫んだ。 「ソラ!」 『呼んだー?』 背を向け歩いていたが立ち止まりこっちを向き気の抜けた返事をした。 「いつでもいいけど俺ん家に飯食いに来いよ」 『ありがとう今度お邪魔するよ。あ、ヨシノさんによろしく伝えといて』 「分かった」 また『バイバイ』と今度は大きく手を振り別れた。 隣りに居るチョウジは何故かニヤニヤしている。 「…どうしたんだよいきなりニヤけて」 「なんでもないよ」 そう言うと最後のポテチをパクッと口に入れた。 「(お互い素直になればいいのに…)」 1003 ← |