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愛は僕等を救わない
01


暗いのに赤色だけハッキリと見える。
辺り一面赤、赤、赤。赤しか見えない。
僕の掌も服も全部赤だった。とぐろを巻いた蛇が足下に近寄ってくる。
その僕の足元には見覚えのある人物が倒れていた。

それは、僕の大切な―――

『うわあああああああ!!!』





そこでバッと目が覚めた。
また嫌な夢見たな…夢の中で柄にもなく叫んでしまった。
あれ、日が昇ってるってことは今は朝か。…でもなんで僕はこんなとこにいるんだろう、隣はサスケとナルトが眠っていた。サスケはなんだか苦しそう。

『…サクラちゃん』

僕等に背を向け前で座っている彼女を呼んだ。

「ソラ!起きたのね良かった!」

『わっ』

余程嬉しかったのか僕に抱きついた。僅かに啜り泣く声が聞こえる。

「ソラ大分魘されてて…サスケ君も凄い熱で私…どうしたら…」

『…ごめん』

ああ、そっか。中忍試験を受けて死の森に入ったんだ。そして長い髪の女性に…。

「あんたが謝ることじゃないわよ」

『寝ないで介抱してくれたんでしょ?ありがと…』

「当たり前のことをしただけよ」

照れたように目線を逸らした。


『ねぇ、僕が寝てる間に何があった?』

「…大蛇丸ってさっきの奴がサスケ君の首元に噛みついて痣が…それからサスケ君苦しそうで…っ…。私達が持ってた巻物は焼かれたわ…あと音忍が襲って来るかもしれない!」

『どうして?』

「奴が…大蛇丸が言ってたのよ」

音忍と大蛇丸は繋がってたってことか…。女性だと思っていたが大蛇丸って名前からして奴は男性みたいだ。


「それよりもあんた怪我してんだから大人しく寝てなさい」

『もう平気、治ったって』

「嘘よ。傷口深いんだから少し動いたら血出て止まんなくなるわよ。さっきだって凄い出血してたんだから」

『………』

「だからほら、ソラは早く寝てなさい」

うっ…僕だって負けない!

『僕はもう充分寝たからサクラちゃん寝て。目の下に隈出来てるよ。ずっと寝てないんだろ?』

早く早く、と急かすと渋々横になり眠りについた。

眠りについたのを確認してから痛む自分の腹部を見ると服に血が染み付いていた。服を捲ると包帯が巻かれていたが既に血で全体が赤く染まっていた。通りで頭がクラクラするわけだ。血が足りない。けど眠らずに介抱してくれたんだ、サクラちゃんには感謝しなくては。試験終わったら何かしようかな。

『ああ…』

夢じゃないんだ…どこか他人事の様に感じてる自分がいる。
にしても痛い、痛すぎる。腹部を見てから痛みが増した気がする。見なきゃ良かった…お腹と全身が痛い。大蛇丸との時打ち付けたからだ。痛み止なんてある筈もなく…今敵が来たら僕一人じゃ確実に殺られるだろうな………またネガティブになってしまった。もっと前向きに、ポジティブに考えなくちゃ。

そういえば大蛇丸は僕に何か言っていた。開眼してないとか…どういうことなのか自身にも全く分からない。瞳の色は他の人に比べたら気持ち悪い色かもしれないが珍しくもないと思う。アカデミーに入ってからいろんな瞳の色の人がいるから。


『う…っゲホッ、ゲホッ』

急に苦しくなり地面に片手をついてもう片方の手を口に当てた。

やっと治まり口に当てた方の手を見ると血が付いていた。口ん中も鉄の味がする。
あ…昨日の分の薬飲んでないからか…最近毎日飲んでた。

今の咳で起きなかったか横になる三人を見たが目を冷ます様子はなかった。

急に大蛇丸の言葉が脳裏に浮かんだ。思い出したくない…。

「死期が近い――」

分かってるさ、僕だって長くは生きられないってことくらいは。血を吐くのは初めてじゃない。何十回も数えきれない程ある。シカクさんやヨシノさんは薬を渡す度に「これを飲めば大丈夫」「きっと良くなる」なんて言葉をくれるが以前に比べ薬を飲む頻度が多くなった。
恐らく知ってるんだ、僕がもうじき死ぬってことを。


いつも袋の中には一〜二日分の薬が入れてたがそれは大蛇丸に燃やされちゃったもんなー、もうあと持ってきてないし…五日間もこの森の中で試験やるって唐突過ぎるんだ、事前に知ってたらちゃんと五日分の薬持ってきてたのに…。
二〜三日薬飲まなくても大丈夫かと思ったけど大丈夫じゃないみたい。一日飲まなかっただけで胸が苦しい…困った。だがこの胸の苦しみもじっとしてれば直になくなるだろう。慣れだ慣れ!

今はこの場を乗りきらなくちゃ。

『よし、』

ヤル気を出したところ、サスケの魘り声が聞こえた。
僕の声のせいで起きたのかと思ったが違ったようだ。

額には濡れたタオルが置いてあったが既に温くなっていた。タオルを退かし額に手を乗せると熱かった。サクラちゃんのであろう近くに置いてあった水筒に手を伸ばしタオルを濡らして絞りサスケの額に置いた。
早く目覚ましてくれればいいんだけど…。ふと首元を見るとサクラちゃんの言ってた痣があった。痣というか呪印みたいな…よく分かんないや。
ナルトは…深い傷を負ったわけでもないし大丈夫そうだな。呼吸も落ち着いてる。ただ目を覚まさないのが心配。

苦しそうなサスケに掌を向け気休めでも、と掌仙術を使った。僕が使える医療忍術…。
これで容態が少しでも良くなればいいんだが…。


水筒の水はもう無いし近くに水が汲める場所でも在ればいいのだが…。
三人のうち誰かが起きたら水でも探しに行こう、顔も洗いたいし喉がカラカラだ。食料も探さなくては。









あきゅろす。
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