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愛は僕等を救わない
03



立ち上がろうとした時強い突風が吹き出した。

「新手か!?」

先刻、敵が襲ってきたばかりだというのに。
この場にいるのは危険だと察知し木の影に隠れた。

漸く治まり先程の場所に行くとサスケとサクラちゃんがいた。

「合言葉だ」

『…大勢……………』

言葉に詰まり冷や汗が頬を伝う。二人に敵だと思われてしまっては終いだ。なんとか僕だと分かってくれるように悲願するような視線を向けた。

「…ソラだな」

「ソラね」

良かった、分かってくれた!
蔑むような目で見られたのはこの際気にしない。


「みんな大丈夫か?」

「ナルト待ちなさい!合言葉…」

「分かってるって。大勢の敵の騒ぎは忍びよし。静かな方に隠れ家もなし。忍びには時を知ることこそ大事なれ。敵のつかれと油断するとき」

わぁ…サラサラと詰まることなく言ってしまった。さっきは覚えられないって言ってたのに。
サスケがまたナルトに向かってクナイを投げた。
驚愕しながらもそのクナイをナルトは避けた。

「今度は俺の攻撃を避けるほどの奴か」

またナルトの偽物か。そうだよね、本物だったらあんなに長い合言葉覚えられる筈がない。
化けやすいのかな…ってそれならナルトはどこにいったんだ。まさか捕まってるんじゃ…心配だ。


「よく分かったわね…。何故分かった。私が偽物だと…」

「てめーが土ん中で俺達の会話を聞いてるのは分かってた」

なんだって…初耳だ。気配なんて微塵も感じなかったのに。

「だからわざとあんな合言葉にした。あいつがそんな長い歌覚えられるはずがないからな…つまりお前は偽物ってことだ」

「なるほど…疲れも油断もないってわけね。思った以上に楽しめそうね…」

変化を解き現れたのは長身の女性だった。この試験が始まる前に見た不気味な蛇みたいな人だったのが記憶に新しい。
その女性は笠を外し不気味に微笑んだ。


「私達の"地の書"欲しいでしょ…。君達は"天の書"だものね」

長い舌で持っていた地の書を絡め手で喉へ押し込むと飲み込んだ。

「さぁ…始めようじゃない。巻物の奪い合いを…命懸けで」



一瞬死んだと思った。

確かに見たんだ、自分が死ぬ場面を、クナイが体に突き刺さる感触があった。
だがそれは幻術で…体はなんともなかった、なのに、

涙が止まらない。思考が、目が定まらない。
殺されると言う限りない恐怖が僕を支配する。
今さらになって死ぬのが怖いなんて。何を畏れているんだ、僕にはもう……。

「ぐっ…うおえっ……」

傍らでサスケが吐いた。
やっぱり見たんだ、自分が死ぬところを……。
サクラちゃんは涙を流しへたり込んでいた。
このままじゃみんな奴に殺されてしまう。早く逃げなきゃ!

恐怖で体が硬直してる。
動け…動け!


女性が僕達にクナイを投げた。
避けきれない、そう思い目を閉じた。

痛みがこないなと目を開けると大きな木の根本にいた。
サスケの太股にはクナイが刺さっておりそれを抜く。

『サスケ…っ』

痛みで恐怖を消し去ったんだ。

『血が…!』

「大したことない。それより今は奴からどう逃げるかだ」

僕等三人で戦っても勝ち目は皆無、当然の判断だった。

ハッとしたサクラちゃんが話しかけようとしたがサスケの手によって塞がれ言葉を発することなく終わった。
こんなに動揺したサスケは初めて見た。


「ヘビ!!」

サクラちゃんの叫び声で気づき僕等は瞬時にその場を退いた。
蛇はサスケを狙っていったが彼の放った手裏剣で倒れた。倒したかと思ったが蛇の喉元がミリミリと突き上がる。


「一瞬たりとも気を抜いちゃダメでしょ。獲物は常に気を張って逃げまどうものよ…」


蛇の肉を破り中から先程の女性が出てきた。
なんて奇怪な…。


「捕食者の前ではね」


ああ、もう僕等は逃れられないんだ。


不意に目が合い僕だけを見てニヒルに笑った。

「貴女…良い眼持ってるじゃない」

ゾクリと鳥肌が立ち寒気がした。

「その眼が欲しい」

『何を言ってるんだ…っ』

僕の眼は写輪眼や白眼の様に何かを見切ったり見透せる訳じゃないし力も何もない。

「自分じゃ気づいてないのね、残念だわ」

気づいてない?何に?僕の眼がなんだっていうんだ。



「悪いなサスケ…合い言葉は……忘れちまったぜ!」

上に目を向けると高い木の幹にナルトが立って僕等を見下ろしていた。
てっきり捕まっていると思ってたので安心したが今の状況は拙い。形勢逆転なんてとても狙えやしない。

さて、これからどうする。








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